ビジネス法務5月号に、「知財・無形資産の投資・活用における「開示」と「ガバナンス構築」のすすめ方」が特集されています。「知財投資等に関する情報開示の具体的対応----知的財産の範囲,開示の内容・方法」(岩田合同法律事務所パー トナー弁護士,弁理土 工藤良平氏、岩田合同法律事務所パー トナー弁護士 伊藤菜々子氏)では、改訂CGコードの下で各社において知的財産の投資等に関していかなる情報開示が求められており,実務上いかなる対応を行う必要があるか,検討しています。
「改訂ガバナンスコードの下で各社に求められている開示の水準と各社の現状の開示実務 の間には 相応のギャップが存在しているように見受けられる。」 「現状でコンプライとの判断が難しい上場会社については 補充原則で求められる開示や取締役会による実効的監督をいかに進めるのか、さらにその前提となる知財・無形資産の投資・活用の現状を整理し、それらを戦略的にいかに実践していくかについて、今後の計画や検討方針についてエクスプレインするという対応が考えられよう。」 その通りだと思います。。 ビジネス法務、2022年5月号、P.65-89 「知財・無形資産の投資・活用における「開示」と「ガバナンス構築」のすすめ方」 https://www.chuokeizai.co.jp/bjh/latest/#page_idx_8795 以下、メモ。 知財投資等に関する情報開示の具体的対応 ----知的財産の範囲,開示の内容・方法 工藤良平・伊藤菜々子 改訂CGコード補充原則3-1③の下で求められている知財投資等に関する情報開示の水準と各社の現状の開示実務ないし意識の間は,相応のギャップが存在しているように見受けられる。本稿では,改訂CGコードの下で各社において知的財産の投資等に関していかなる情報開示が求められており,実務上いかなる対応を行う必要があるか,知財・無形資産ガバナンスガイドラインの内容もふまえ,検討する。 Ⅰ. はじめに ・東証公表の「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2021年12月末時点)によれば、補充原則3 - l ③のコンプライ率は2022年 4 月から開始される新市場区分におけるプライム市場選択会社で66.7%,スタンダード市場選択会社で58.6%。改訂CGコード全原則の中でも低い水準のコンプライ率に留まる。 ・相当数の上場会社がサステナビリティを重要な経営課題と認識し検討を深めつつも、検討を知財投資等に関する情報開示へつなげるまでには至っていない。 Ⅱ. 開示の「主体」 ・プライムまたはスタンダード市場以外の上 場会社や非上場会社については, 補充原則3 - 1③に基づくコンプライ・オア・エクスプレインの義務を負うものではない。 ・知財・無形資産が企業価値の源泉となる中小・スタートアップ企業に関しても,投資家・金融機関との対話の際に,知財・無形資産ガバナンスガイドラインで述べられているような知財・無形資産の投資・活用戦略に向けた取組み・情報発信の実施を通じて 投資家 金融機関から自社の知財戦略等に関して的確な評価を受け資金調達につなげるという活用方法も想定されている。 Ⅲ 開示対象となる「知的財産」の範囲 ・狭い意昧での「知的財産権(特許権、商標権、意匠権、著作権など)」に限られず、技術、ブランド、デザイン、コンテンツ、データ、ノウハウ、顧客ネットワーク、信頼・レピュテーション、バリューチェーン、サプライチェーン、これらを生み出す組織能力・プロセスなど幅広い「知財・無形資産」を含む。 Ⅳ. 開示の「内容」 1.ロジック/ストーリーとしての開示 ・上場会社は,自社の強みとなる知財・無形資産を把握・分析のうえ,それらがどのように持続的な価値創造やキャッシュフローの創出につながるかについて,具体的な[ロジック /ストーリー」の形に構築して開示•発信していくことが求められる。 ・「ある技術について〇件の特許権を保有している」,「保有知財一覧は○○のとおりである」といった単発の情報開示が求められているわけではない。 ・将来に向け,どのような知財・無形資産を活用することにより,顧客や社会にどのような価値を提供し,どのように持続可能なビジネスモデルを構築していくか さらに知財・無形資産の維持・強化に向けどのような投資を行い、あるいは損失リスクに対してどのような方策を講じていくかといった知財・無形資産の投資・活用戦略について、実効的な監督を行うべき取締役会(補充原則4 - 2②)での議論をふまえたうえでの情報開示を行うことが求められる。 2求められる7つのアクション ①現状の姿の把握⇒②重要課題の特定と戦略の位置づけの明確化⇒③価値創造ストーリーの構築⇒④投資や資源配分の戦略の構築⇒⑤戦略の構築・実行体制とガバナンス構築⇒⑥投資・活用戦略の開示•発信⇒⑦投資家等との対話を通じた戦略の錬磨という時系列に沿った形でのベストプラクティスと思われるアクション 「経営デザインシート」の活用 3 開示項目に関する留意点 改訂ガバナンスコードの下で各社に求められている開示の水準と各社の現状の開示実務 の間には 相応のギャップが存在しているように見受けられる。 V 開示の「方法」 自社のウェプサイト、統合報告書、サステナビリティレポート、中期経営計画、有価証券報告書などで開示し、ガバナンス報告書ではその内容を参照するという開示事例が多い。 Ⅵ. 役員のトレーニング・外部専門家の活用 取締役会での実質的議論を確保するため 取締役・監査役に対する知財・無形資産ガバナンスガイドラインの内容についての「トレーニングの機会の提供・斡旋」等の取組み必要となる。 自社リソースのみでのアクションの実行が難しい場合、外部専門家からの支援・アドバ イスを受けつつ、取締役・監査役へのトレーニングに加え、知財・無形資産の投資・活用戦略の構築に取り組むことも考えられる。 Ⅶ おわりに 現状でコンプライとの判断が難しい上場会社については 補充原則で求められる開示や取締役会による実効的監督をいかに進めるのか、さらにその前提となる知財・無形資産の投資・活用の現状を整理し、それらを戦略的にいかに実践していくかについて、今後の計画や検討方針についてエクスプレインするという対応が考えられよう。
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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