1月13日のブログで、日本企業の知的財産の活用レベルを生成AIに評価させた結果の一部を紹介し、1月14日のブログでソニーがレベル5「ビジョン(未来創造)」と評価されていることを紹介、1月17日のブログで日立製作所とキーエンスの知的財産活用レベルを紹介しました。
知的財産を「攻め」の武器に:企業の未来を拓く5段階レベル戦略 https://yorozuipsc.com/blog/57406895 知的財産活用レベルがレベル5「ビジョン(未来創造)」の企業 https://yorozuipsc.com/blog/51021469 知的財産活用レベル:日立製作所、キーエンス https://yorozuipsc.com/blog/3767064 同様の手法で先進企業の知的財産活用レベルを評価した結果を紹介したいと思います。 『統合報告書における「知財・無形資産の投資・活用戦略の構築・開示・発信」の優れた日本企業を5つ挙げてください。』と指示したところ、6つの生成AIで、ソニーグループが4つ、日立製作所とキーエンスが3つ、トヨタ自動車、花王、富士フイルム、資生堂が2つの生成AIによってピックアップされました。これまでに、ソニーグループ、日立製作所、キーエンスを紹介しましたが、今回は、トヨタ自動車、花王、富士フイルム、資生堂を紹介します。 トヨタ自動車 提供された情報源に基づくと、トヨタ自動車の知的財産活用レベルはレベル4「インテグレーション:知的財産と事業戦略を統合し、企業を変革する段階」と評価できます。その理由は以下の通りです。 ●経営戦略との統合: トヨタ自動車は、知的財産戦略を経営施策と連動させており、未来のモビリティ社会の実現を目指しています。具体的には、「カーボンニュートラル」やコネクティッド技術、自動運転技術といった重点領域にリソースを集中させ、知的財産権の取得と活用を強化しています。 ●知的財産委員会の設置: トヨタ自動車では、「知的財産委員会」を設置し、経営に資する重要な知的財産の取得と活用、知的財産に絡む経営リスクへの対処方針について審議しています。この委員会は、経営、研究開発、知的財産の三位一体の活動を推進するための重要な役割を担っています。 ●特許ポートフォリオの構築: トヨタ自動車は、研究開発活動と知的財産活動を組織的に連携させ、強い特許ポートフォリオを構築しています。研究開発の各フェーズにおいて、知的財産部門が関与することで、開発テーマの選定から特許出願、権利化までを効率的に進めています。 ●オープンライセンスポリシー: トヨタ自動車は、環境・安全分野など、社会と共存する技術の普及を後押しするため、オープンライセンスポリシーを採用しています。適切な条件で知的財産権を広く世の中に提供することで、サスティナブル・モビリティへの貢献を目指しています。ハイブリッドシステムに関する特許ライセンスはその好例です。 ●知的財産権の収益化: トヨタ自動車は、知的財産を経営資源として捉え、収益化にも積極的に取り組んでいます。特許ライセンスによる収益は、次の世代の環境技術開発に再投資することで、知的財産活動のサイクルを回しています。 上記のように、トヨタ自動車は知的財産を事業戦略に統合し、企業の変革を推進するために活用しており、レベル4の段階にあると判断できます。 レベル5「ビジョン:知的財産を用いて未来を創造する段階」に到達するには、知的財産を起点とした新たなビジネスモデルの創出や、業界全体のイノベーションを牽引するような活動が求められます。情報源からは、トヨタ自動車がレベル5の段階に達していることを示す具体的な事例は確認できませんでしたが、今後の更なる進化に期待が持てます。 花王 花王の知的財産活用レベルは、レベル4の「インテグレーション」段階とレベル5の「ビジョン」段階の中間にあると評価できます。 その理由は、以下の通りです。 •レベル4「インテグレーション」要素: ◦事業戦略と知財戦略を密接に連携させている。 ▪知的財産部門は、研究開発部門と連携し、特許、意匠、商標などの知的財産の創出を促進。 ▪取得した知的財産権を適切に保護し、模倣品や不正競争から自社製品を守り、事業の競争力を強化。 ▪ヘルシア緑茶の発売前に、機能性原料となるカテキンの用途や製法の特許を出願・権利化し、カテキンに関する特許ポートフォリオを形成することで、他社に対する参入障壁を築き、事業を優位に展開。 ◦知的財産を活用した新製品・新サービスの開発に力を入れている。 ▪独自の技術を活かした「アタック ZERO」や「ビオレ u」などのヒット商品を世に送り出している。 ◦オープンイノベーションを推進し..、社外との連携による技術資産の社会実装を促進...。 ◦知財ミックス戦略を展開し、特許・商標など複数の知財を組み合わせ、自社の権利を多面的、有機的に保護。 ◦デジタル技術を活用した知財管理システムの導入や、模倣品対策の強化... など、今後の課題にも積極的に取り組んでいる。 •レベル5「ビジョン」要素: ◦「未来のいのちを守る」というビジョンを掲げ、持続可能な社会に貢献していくことを表明している。 ◦知的財産を活用することで、社会課題の解決に貢献することを目指している。 ▪ESG戦略を策定し、環境、社会、ガバナンスの各分野において、積極的にサステナビリティへの取り組みを進めている。 ▪基盤技術とデジタル技術を組み合わせて活用し、社会に貢献できる新しいベンチャー事業を開始。 ▪「皮脂 RNA モニタリング」技術を活用した「未病」への対応など。 上記のように、花王は知的財産を事業戦略に統合し、企業変革を進めながら、知的財産を用いて未来を創造する段階にも足を踏み入れていると言えます。しかし、レベル5の「ビジョン」段階において、具体的な事例や成果はまだ発展途上であると考えられるため、現時点ではレベル4とレベル5の中間と評価しました。 今後の花王の知的財産活用においては、デジタル技術の活用やグローバル人材の育成を強化することで、知的財産活動の効率化とグローバルな知財体制の強化を進め、より一層社会課題の解決に貢献していくことが期待されます。 富士フイルム 提供された資料に基づいて、富士フイルムの知的財産活用のレベルを評価すると、レベル4の「インテグレーション」段階に達していると判断できます。その理由は以下の通りです。 •事業戦略との統合: 富士フイルムは、知的財産活動を事業戦略と密接に連携させています。統合報告書2024によると、知的財産部は社長直下の組織として位置づけられており、事業部門、研究開発部門と一体となって知財活動を行っています。 これは、知的財産を単なる守りの手段としてではなく、事業成長の原動力として捉えていることを示しています。 •全社的な知的財産戦略: 富士フイルムは、全社的な知的財産戦略を策定し、それを実行するための体制を構築しています。毎年「知的財産戦略協議」を実施し、各事業部門長、研究開発部門長、知的財産部門長が短期と中長期の知財課題を共有し、議論を重ねて合意形成を行っています。 •知財ポートフォリオ構築: 富士フイルムは、競争優位性を確保・強化するために、適切な知財ポートフォリオの構築に取り組んでいます。市場における自社技術の価値を分析し、必要な知財権を先行取得したり、他社知財への早期対応を行ったりしています。 •グローバルな知財活動: 富士フイルムは、海外グループ会社を含めたグループ一体での知財活動を推進しています。「グローバルIPサミット」を定期的に開催し、海外現地法人との情報共有や連携強化を図っています。 また、海外への駐在員派遣などを通じて、グローバルな事業拡大を支援する知財活動を展開しています。 •オープンイノベーションへの活用: 富士フイルムは、オープンイノベーションを推進しており、知的財産部門は、知的財産権に関する契約交渉やリスク管理などを行い、円滑な連携を支援しています。 上記のように、富士フイルムは知的財産を事業戦略に統合し、企業全体の競争力強化に活用しており、レベル4の「インテグレーション」段階に達していると評価できます。 しかし、レベル5の「ビジョン」段階、すなわち知的財産を用いて未来を創造する段階に進むためには、以下のような取り組みが必要になると考えられます。 •将来予測と知財戦略の連携: 社会変化や技術革新を予測し、将来の事業機会やリスクを特定した上で、それに対応する知財戦略を策定する必要がある。 •知財の新たな収益源への活用: ライセンス供与など、知的財産を新たな収益源として活用する取り組みを強化する必要がある。 •知財人材の育成: 知的財産を活用したビジネスモデルを創出できる、より高度な専門性とビジネススキルを持つ人材を育成する必要がある。 富士フイルムは、すでに高いレベルで知的財産を活用していますが、上記の取り組みを強化することで、知的財産を基盤とした未来を創造する「ビジョン」段階へと進むことが期待されます。 資生堂 提供された資生堂の統合報告書等の資料に基づくと、資生堂の知的財産活用のレベルはレベル4の「インテグレーション」段階と評価できます。 その理由は、以下の点が資料から読み取れるためです。 •研究開発と知的財産戦略の連携: 資生堂は、研究開発部門と知的財産部門が密接に連携し、特許出願戦略の策定や先行技術調査などを共同で行っています。この連携により、研究開発の成果を効率的に知的財産権として保護し、競争優位性を確保することに成功しています。 •事業戦略と知的財産戦略の統合: 資生堂は、「三位一体経営」を強化し、開発戦略、事業戦略と知的財産戦略を連携させることで、相乗効果を高めています。この統合的なアプローチにより、知的財産が事業戦略達成のための重要なツールとして活用されていることがわかります。 •ブランド価値向上への貢献: 資生堂は、プレステージブランドの独自技術や高品質な製品を保護する知的財産権を取得することで、ブランド価値の向上に貢献しています。模倣品対策やブランドイメージの維持にも知的財産を活用することで、ブランドの持続的な成長を支えています。 •デジタル戦略への貢献: デジタル技術を活用した美容サービスやパーソナライズ化された製品開発において、関連する知的財産権を取得することで、新たなビジネスモデルの構築を支援しています。デジタル技術と美容を融合させた新たな価値の創造を、知的財産の側面から支えている点は、レベル4の特徴を示しています。 上記のように、資生堂は知的財産を事業戦略に統合し、企業の変革を推進するために活用していることがわかります。しかし、レベル5の「ビジョン」段階である未来を創造する段階には、まだ到達していないと考えられます。レベル5に到達するには、知的財産を基盤とした新たなビジネスモデルの創出や、社会全体の課題解決に貢献するような、より革新的な知的財産活動が必要となるでしょう。 しかし、資生堂はオープンイノベーションの推進やAI・データ分析の活用など、将来を見据えた取り組みを強化しています。これらの取り組みを通じて、知的財産活用をさらに進化させ、レベル5の「ビジョン」段階への到達を目指していくと考えられます。 Intellectual Property Utilization Levels: Toyota Motor Corporation, Kao Corporation, Fujifilm, and Shiseido On the January 13 blog, part of the results of having generative AI evaluate the level of Japanese companies’ intellectual property utilization were introduced. On the January 14 blog, it was revealed that Sony was rated at Level 5, “Vision (Future Creation).” And on the January 17 blog, the intellectual property utilization levels of Hitachi and Keyence were introduced. “Using Intellectual Property as a Strategic Weapon: A Five-Level Strategy to Shape the Future of Enterprises” https://yorozuipsc.com/blog/57406895 “Companies with Level 5 ‘Vision (Future Creation)’ Intellectual Property Utilization” https://yorozuipsc.com/blog/51021469 “Intellectual Property Utilization Levels: Hitachi, Keyence” https://yorozuipsc.com/blog/3767064 This time, I would like to share results from a similar evaluation of advanced companies' intellectual property utilization levels. When prompted, "Please list five Japanese companies that excel in constructing, disclosing, and communicating their strategies for investing in and utilizing intellectual property and intangible assets in their integrated reports," generative AI identified Sony Group in four cases, Hitachi and Keyence in three, and Toyota, Kao, Fujifilm, and Shiseido in two. Having previously introduced Sony, Hitachi, and Keyence, this post will focus on Toyota Motor Corporation, Kao Corporation, Fujifilm, and Shiseido. Toyota Motor Corporation Based on the provided sources, Toyota's intellectual property utilization level can be evaluated as Level 4: Integration—a stage where intellectual property is integrated with business strategy to transform the company. Key reasons include:
Kao Corporation Kao's intellectual property utilization is evaluated as between Level 4: Integration and Level 5: Vision. Supporting factors include:
Fujifilm Fujifilm’s IP utilization is assessed as Level 4: Integration. Highlights include:
Shiseido Based on its integrated reports, Shiseido’s IP utilization is also evaluated at Level 4: Integration. Evidence includes:
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著者萬秀憲 アーカイブ
February 2025
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