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阻害要因ありと進歩性が認められた令和3年(行ケ)第10165号「配送荷物保管装置」

19/3/2023

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本件は、動機づけなし・阻害要因ありとして、無効審判事件において、「本件審判の請求は、成り立たない。」とした審決が維持された事例です。
判決は、仮に、原告が主張するとおり、接続体が伸縮自在な盗難防止具である甲7技術が周知技術であり、これを甲2発明に適用することが動機付けられ得るとしても、甲2発明においては、少なくとも相違点3に係る本件発明の構成「配送荷物収納体が第1の形態の場合に『前記伸縮部を短縮した状態として』配送荷物収納体がドアの一部に吊り下げられた状態とする」を採ることについて、阻害要因が存するというべきである、としています。
進歩性判断における阻害要因とは、当業者が引用発明から特許出願に係る発明へ到ることを妨げる要因で、例えば、主引用例に副引用例を適用すると主引用例の発明が機能しなくなってしまうとか、主引用例の発明の目的を反する方向の変更となる場合をいいます。
阻害要因があると認定されると、動機づけがあったとしても進歩性が認められるため、真っ先に阻害要件がないかどうか主引用例を読み込みます。見つけたときは、やったあ!となります。
 
特許 令和3年(行ケ)第10165号「配送荷物保管装置」(知的財産高等裁判所 令和4年8月30日) 2月15日
https://ipforce.jp/articles/soei-patent/hanketsu/2023-02-15-5687
 
令和3年(行ケ)第10165号 審決取消請求事件 判決
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/446/091446_hanrei.pdf
ア 本件発明1と甲2発明1との相違点1ないし4は、前記第2の3(3)イの とおりであるところ、これらはいずれも本件発明1における伸縮部を備えているか否かをその内容とするものといえる。 そこで、以下、本件特許が出願された当時の当業者が、甲2発明1、甲 4発明及び甲5公報ないし甲7公報から認定される周知技術に基づいて、甲2発明1について上記伸縮部を備えることを容易に想到し得たか否か について検討する。
イ まず、主引用発明である甲2発明1について検討するに、甲2公報において、盗難防止用連結ワイヤを伸縮可能なものとすることが記載又は示唆されているというべき記載は見当たらない。また、前記(1)のとおり、甲2発明1は、盗難防止用連結ワイヤの一方をドアノブや玄関周り固定物に接続し、他方を宅配容器本体に接続するもの であるところ、甲2公報の段落【0022】並びに図3及び図4の記載によれば、甲2発明1の盗難防止用連結ワイヤは、玄関内側のドアノブや建物内部の玄関周り固定物に接続するものであるといえる。さらに、甲2公報の段落【0022】及び図3の記載によれば、甲2発明1において、配 達物を収納していないときの形態の宅配容器本体をドアノブに掛ける際には、宅配容器本体に備えられた「宅配容器取っ手」を使用することとされている。
このように、甲2発明1においては、配達物を収納していないときの形態の宅配容器は、「宅配容器取っ手」を使用して玄関外側のドアノブに掛けられ、他方で、宅配容器に接続された盗難防止用連結ワイヤは、玄関内側 のドアノブや建物内部の玄関周り固定物に接続することとなるのであるから、同ワイヤは、これを可能とするのに十分な長さを確保する必要があ るといえる。そうすると、配達物を収納していないときの形態における甲2発明1においては、盗難防止用連結ワイヤの長さを、ドアの一部に吊り下げられるように短縮する構成は採用し得ず、そのような構成を採る動機 付けは存しないというべきである。
以上によれば、甲2発明1において、盗難防止用連結ワイヤを伸縮可能なものとすることは動機付けられないというべきである。なお、上記に照らすと、甲2発明1においては、少なくとも相違点3に係る本件発明1の 構成を採ることについて、阻害要因が存するというべきである。
 
​進歩性が争われた判決の研究─阻害要因について─   特許第1 委員会第3 小委員会
知財管理 62巻(2012年) / 11号 / 1547頁
http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/search/detail.php?chizai_id=aad509b9b5fb6ba71cf65e1956637da4
本稿は、平成21年1月~24年3月に進歩性に関連して知財高裁から出された判決のうち、
阻害要因に関して判断された事例について検討した結果に基づき、出願人の立場から参考となる事例を紹介するものである。審査において発明の構成要件が開示された複数の引用文献が審査官より提示されれば、阻害要因を主張しない限り進歩性が肯定されなかった時期もあった。しかし、現在の進歩性の判断においては、発明の構成が開示された複数の文献が存在している場合、阻害要因の有無が唯一の進歩性肯定の理由ではなく動機付けの有無と並ぶ一つの評価要素という位置付けになっている。引用発明の記載を様々な観点から注意深く確認し、引用発明の組み合わせの阻害要因の存在を主張することは、進歩性を担保するうえで依然として有効かつ効果的である。
 
近年の裁判例における阻害要因の分類と阻害要因の主張時における留意点の検討
パテント  Vol. 68No. 11 P90(2015)
https://jpaa-patent.info/patents_files_old/201511/jpaapatent201511_090-098.pdf
特許出願の中間処理,審決取消訴訟または特許権侵害訴訟において,発明の進歩性を主張するときに,主引用発明と副引用発明との組み合わせを阻害する要因(いわゆる阻害要因)を主張することが良く行われる。実際に実務を担当してみると,事案毎に適切な阻害要因の主張の論理を構築することには困難がつきまとう。このような困難を解決する一つの方策として過去の裁判例において主張された阻害要因の主張趣旨を類型に分類して整理しておくことが考えられる。このように分類して整理しておけば,事案に応じた適切な類型を選択して,阻害要因の主張の論理を構築しやすくなるからである。また,同じ類型であっても,阻害要因が認められた事例,及び阻害要因が認められなかった事例について整理しておけば,今後,より的を得た阻害要因の主張ができるものと思われる。そこで,本論文では,阻害要因が問題になった近年の裁判例を,その阻害要因の主張趣旨毎に分類して得られた阻害要因の類型について紹介する。そして,阻害要因の類型毎に近年の裁判例を紹介しつつ,阻害要因の主張時における留意点について検討した結果を報告する。

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