「年報知的財産法2022-2023」の[2022年判例の動向]「判例の動き 1.特許法・実用新案法 1 クレーム充足性 (2)均等侵害」で、令和3年(ネ)第10040号差止請求権不存在確認請求控訴事件〔学習用具事件〕が、『均等侵害を是認した高裁判決であり、被疑侵害品が特許発明にはない作用効果を生じている場合について、当該特許発明に係る効果を奏した上で「付加的な効果」を生じさせるものにすぎず、均等の第 2 要件の充足性に影響しないと判断した点で実務上参考となる。』として、とりあげられています。
本判決では、『…均等の第2要件における「作用効果」は,特許発明の出願時における従来技術と特許発明との対比により確定されるものであって,基本的には,明細書の「発明の効果」の項の記載に基づいて確定されるべきものであるところ,本件明細書の「発明の効果」の欄には,「楽しみを感じながら知らず知らずに特定の国家や自治体,行政単位に関連する地域の地図上の形状,又は該地域を象徴する国旗,シンボルマーク等の模様,等の記憶対象が憶えられる。」(【0059】)と明記されており,原告製品を使用したコンピューターにおいても,イラスト画,形状・イラスト画,都道府県形状画が,これに対応する語句の音声データと同期して再生されることで,都道府県の形状を覚えることができるのであって,本件発明の効果を奏するものということができ,組画を地方単位でしか選択できない(都道府県単位で選択できない)からといって,上記効果を奏しないとはいえない。また,原告製品を使用したコンピューターにおいて,イラスト画,形状・イラスト画,都道府県形状画以外に都道府県位置画が存在することは,既に説示したとおり,本件発明の効果を奏した上で付加的な効果を生じさせるものにすぎず,均等の第2要件を充足しないという根拠となるものではない。』均等と論第2要件が成立する旨判示しています。 『(ⅰ)本件特許発明の課題の解決に関する「作用効果」と、(ⅱ)更に付加して認められる「作用効果」や実施例特有の「作用効果」を、区別して議論すべきである。これらを「作用効果」の程度という土俵で議論して、(ⅱ)の効果はなくても(ⅰ)という程度の効果は奏していると議論しても、認められない傾向にある。』という、下記、高石秀樹弁護士の解説とあわせて読むと参考になります。 【特許★】対象製品が奏する効果は「本件発明の効果を奏した上で付加的な効果を生じさせるもの」に過ぎないとして、均等論第2要件を認めた事例 2022年03月28日 https://www.nakapat.gr.jp/ja/legal_updates_jp/%E3%80%90%E7%89%B9%E8%A8%B1%E2%98%85%E3%80%91%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E8%A3%BD%E5%93%81%E3%81%8C%E5%A5%8F%E3%81%99%E3%82%8B%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E3%81%AF%E3%80%8C%E6%9C%AC%E4%BB%B6%E7%99%BA%E6%98%8E%E3%81%AE/ 令和3年(ネ)10040【学習用具】<菅野> 均等成立 第2要件 https://ameblo.jp/hideki-takaishi/entry-12707440969.html 令和3年10月14日判決言渡 令和3年(ネ)第10040号差止請求権不存在確認請求控訴事件(原審・大阪地 方裁判所平成31年(ワ)第3273号) https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/634/090634_hanrei.pdf ソフトウェア関連発明特許に係る判例紹介 ~進歩性欠如の無効の抗弁は認めず均等侵害を認めた裁判例~ 令和3年(ネ)第10040号 https://knpt.com/contents/software/software2022.01.21.pdf
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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