知的財産事件に携わる実務家を対象として、北海道大学大学院法学研究科が毎年開催されているサマーセミナー「最新の知的財産訴訟における実務的課題」、今年度は、著作権・不正競争・意匠・商標に関する課題を取り上げています。
今年は、北大での講義がオンライン(Zoom)でもライブ配信されています。 8月27日午前の上野教授「著作物の類似性」、午後の田村教授「著作権の制限規定に関する近時の動向」、8月28日午前の上野教授「著作権法における行為主体論」、と著作権に関する部分の講義を聴講しました。 企業知財部時代は、著作権については、問題とならないよう社内教育・啓蒙に努めたえほか、模倣品対策として活用させてもらいました。法改正があるたびに社内で説明していましたが、個人的には統一的理解ができずいつもモヤモヤ感が残っていたように思います。 今回の上野先生の講義、田村先生の講義でその正体の一端が分かったような気になれました。 特に、8月28日午前の上野教授「著作権法における行為主体論」で、背景や争点が良くわかりましたので、音楽教室の講師や生徒の楽曲演奏が著作権使用料の徴収対象となるかが争われ、生徒による演奏について音楽教室が楽曲使用していると言えるか一審と二審の判断が分かれた訴訟の最高裁における弁論(9月29日)、その後の最高裁として判断を注目したいと思います。 2022年度 北海道大学サマーセミナー 最新の知的財産訴訟における実務的課題――著作権・不正競争・意匠・商標編―― https://www.juris.hokudai.ac.jp/riilp/event/summer-seminer2022.html 開催日時 2022 年 8 月 27 日(土) 10:00 ~ 12:30 科目名 著作物の類似性 講師 上野 達弘(早稲田大学法学学術院教授) 内 容 著作物の類似性は、似てるか? 似てないか?という最も“分かりやすい”論点であるが、それは著作者の権利が及ぶ範囲を画する重要な理論的課題でもあり、さらに実務上も問題になることが多いテーマと言えよう。本講義では、著作物の類似性判断に関する幅広い裁判例を多数の資料と共に紹介しつつ、新たな議論の整理を試みる。 開催日時 2022 年 8 月 27 日(土) 14:00 ~ 16:30 科目名 著作権の制限規定に関する近時の動向 講師 田村 善之(東京大学大学院法学政治学研究科教授) 内 容 著作権の制限規定は、著作権を制限する一般条項を求める動きに対抗するかのように、2007 年以降、多数のものが新設されており、とりわけ 2018 年改正では、小一般条項とも呼ばれる相対的に包括的な複数の制限条項が新設されたが、残された課題も多い。本講演では、理論的に著作権が制限されるべき場合はどのような場合と考えられるのかというところから始めて、現行法の問題点を探るとともに、2019 年以降の法改正のなかから、写 り込み、教育関係、図書館関係など、代表的なものを取り上げて解説する。 開催日時 2022 年 8 月 28 日(日) 10:00 ~ 12:30 科目名 著作権法における行為主体論 講師 上野 達弘(早稲田大学法学学術院教授) 内 容 ある行為の主体は誰かという問題は、過去 20 年の著作権法学における最大の論点と言えるが、音楽教室事件に関する最高裁の判断が迫る現在、いわゆる「カラオケ法理」の命運を含め、この論点は大きな山場を迎えようとしている。本講義では、この問題に関する長年の議論をその背景に立ち返って探り、今後の展望を試みる。
0 Comments
Leave a Reply. |
著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
カテゴリー |