特許出願する場合、明細書にすべてを書くのではなく、ノウハウ部分を記載しないで、出願することはよくあることです。そうした場合、権利化しようとする部分を明細書に記載し、ノウハウで残したい部分はノウハウとして特許明細書には記載しないことになります。
特許出願しないでノウハウで管理する場合は、それなりのノウハウ管理を行うため問題になりにくいのですが、特許出願した場合には、このノウハウ部分に関する秘密管理があいまいになりがちです。こうした特許出願内容に関連した技術情報の秘密管理に関して、注意を喚起するような内容の裁判例(大阪地裁令和5年1月26日:令2(ワ)8168号)があります。 ノウハウは、文章化、リスト化、その他の手法によって認識できる形とし、それを秘密管理しているかどうか再確認しておくべきでしょう。 令和5年1月26日判決言渡 令和2年(ワ)第8168号 損害賠償等請求事件 判 決 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/874/091874_hanrei.pdf 営業秘密ラボ 判例紹介:特許に包含される技術情報の秘密管理 https://www.xn--zdkzaz18wncfj5sshx.com/2023/04/blog-post_18.html 結局のところ裁判所は、原告が主張する非公開の手技等は、文章化もされていないし、それが秘密であることを従業員に認識させていなかった、ということで手技等の技術の秘密管理性を認めなかったことになります。また、特許権についても、被告は特許権の技術的範囲に含まれない技術を実施したのであるから、秘密保持契約の債務不履行にはならないとされています。 この裁判例における手技のように、自社開発技術について文章化等せずに従業員に実施させる一方、当該技術は秘密であるとの認識を持っている会社は多いと思います。 しかしながら、本ブログでも度々述べているように、文章化等しなければ秘密として管理もできず、裁判において秘密管理性が認められることは無いと考えられます。 このように、営業秘密とする情報は、営業情報や技術情報にかかわらず、文章化、リスト化、その他の手法によって従業員が認識できる形とし、それを秘密管理する必要があります。
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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