別冊パテント第27号に掲載の「内在特性と新規性 ―免疫関連分野の発明を題材にして―」が2022年 08月 02日から先行公開されています。
「一般に,発明 A の有する構成 P(内在特性)が公知の刊行物に記載された引用発明 B には具体的に開示されていないが,発明 B にその構成 P が内在し,その構成を必然的に有している場合,発明 A と発明 B とは内在的に同一であり,その他の構成に相違する点がなければ,発明 A の新規性は否定される。これを原則とし,これに沿った裁判例は多数存在する(1)。一方,当該内在特性について発明 B に記載がなく,出願当時,当業者が認識することができなかったことで,追試実験データを参酌することなく新規性を肯定する裁判例(2)も少なからず存在する。また,用途発明の場合に,物の構成が同一でも用途としての効果に相違があれば新規性を肯定するのか否かなどの問題(3)もあり,内在特性が関係する新規性の判断については,従前から種々の学説や見解が示されてきているが,いまだ明解な判断基準が確立されているとはいえない。」 悩ましい問題です。 内在特性と新規性 ―免疫関連分野の発明を題材にして― 弁理士 細田 芳徳 https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/4007 要 約 内在特性を備えた物の新規性や当該内在特性により導かれる用途発明の新規性は,化学・バイオ分野に特有な問題であり,なかでも当業者にとって認識困難な内在特性に対する扱いには,従来から種々の立場の解釈があり,見解も分かれやすい。すなわち,内在特性について出願後に追試実験データを参酌して判断することの可否や,例えば,美白化粧料が公知の場合に,同じ成分からなるシワ抑制用化粧料の発明に新規性を肯定することの是非は,議論の多いところである。今回,技術的に未解明な要素が比較的多い免疫関連分野の発明に関する最近の裁判例(IL-17 産生の阻害事件,IL-2 改変体事件,及びワクチン組成物事件)を例にして,特に,用途発明に焦点をあてて,これらの問題点を検討した。本稿では,従前からの見解と対比検討をしながら,多少異なる視点から,新規性についての見解の提示を試みた。 目 次 1.はじめに 2.問題の所在 3.免疫関連分野の最近の裁判例の概要 (1)IL-17 産生の阻害事件〔平成 30 年(行ケ)第 10036 号〕 (1-1)事件の概要 (1-2)考察 (2)IL-2 改変体事件〔令和元年(行ケ)第 10076 号〕 (2-1)事件の概要 (2-2)考察 (3)ワクチン組成物事件〔平成 28 年(行ケ)第 10107 号〕 (3-1)事件の概要 (3-2)考察 (4)小括 4.検討 (1)内在特性と新規性 (1-1)多様な内在特性 (1-2)内在特性が問題となる物 (1-3)内在特性と用途発明 (2)新規性の趣旨と新規性判断 (2-1)本稿での立場 (2-2)従前からの見解との対比 5.おわりに
0 Comments
Leave a Reply. |
著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
カテゴリー |