「IPランドスケープ」については、日本国内においては様々な定義が存在し混乱を招いていますが、主に「知財情報を経営戦略・事業戦略策定へ活用」や「知財を重視した経営」の意味合いで用いられることが多くなっているようです。
従来から特許業界で使われてきたパテントマップが過去のデータを扱うのに対し、自社、競合他社、市場の研究開発、経営戦略等の動向及び個別特許等の技術情報を含み、自社の市場ポジションについて現状の俯瞰し将来の展望等を示すもので、経営と知財を結びつけるのが「IPランドスケープ」と言えるでしょう。 こうしたなかで、日本経済新聞電子版(2020/5/3 2:00)に掲載された「知財、量に頼る日本企業 質は海外に見劣り-分析法「IPランドスケープ」で鮮明に」という記事が気になりました。分析法「IPランドスケープ」とされていて、「IPランドスケープ」が分析法と位置付けられているかのように見えることです。 「IPランドスケープ」を進めるうえで良く使われている情報分析ツールとしては、この日経の記事でも紹介されている「パテントサイト」(PatentSight)やVALUENEXのDocRader/TechRader、パテントリザルトのBizcruncherなどがありますが、この見出しをみただけだと、「IPランドスケープ」がこれらと同類の分析ツールに誤解されてしまわないか心配です。 知財情報コンサルタントとして有名な野崎さんが”誤った認識”として、強烈に批判されています。 野崎篤志、⽇経のIPランドスケープ記事について考えてみたー特許の量と質の議論ー https://note.com/anozaki/n/ndf9dff7da80c 同感です。
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「IPランドスケープ」は、大企業の話であり、スタートアップ・ベンチャーとか中小企業には関係ない世界の話だよね、という声が聞こえてきます。しかし、実は、スタートアップ・ベンチャー・中小企業にこそ、「IPランドスケープ」が必要であり、生かせる場が多いのです。
「IPランドスケープ」の活用法としては、下記のことがあげられています。 ①会社の将来ビジョンの策定 ②M&Aや事業提携(オープン・イノベーション)の成功 ③新規ビジネスの市場・情勢分析 ④事業構造の大転換 ⑤知財を生かした資金調達 コア技術をどう獲得し、どう持続的に発展させるか?オープン領域の技術をどう獲得し、どう持続的に発展させるか?という視点から見ると、①~⑤に挙げられている「IPランドスケープ」の活用法は、大企業より、スタートアップ・ベンチャー・中小企業にとってより重要なことがわかります。 しかし、対処できるスキルや経験をもった人がいないため、みすみすチャンスを逃したり、失敗してしまっていることが多いのが現状です。 何から取り組むべきか まず、知的財産部が、事業の失敗を防ぐことを目的に、自社の製品やサービスが他社特許に抵触しないかどうかを調べることを主眼にしていた活動から、自社の戦略や事業を成功に導くことを目的とした知財重視の経営戦略、いわゆるIPランドスケープをめざすように変わることが必要です。また、自社のコア技術を創造する、乃至は強固にする方策を示し、オープン&クローズ戦略を推進することも重要です。 しかし、いきなり立派な分析結果をそろえて経営陣にプレゼンしてもうまくいくことは稀です。自社の抱える経営課題との関係が希薄なことが多いためです。どこの会社でも通用するような一般論にとどまるのではなく、経営陣が考えている自社の抱える経営課題とのかかわりで分析し、方向性を示すことが必要です。 多くの場合、経営陣と知財部の距離が遠いために、知財部が経営陣の考えている自社の抱える経営課題をうまく捉えていない、逆に言うと、経営陣が知財の力に自社課題の解決を期待していない、ことが問題と考えられます。 知財部は、経営陣と距離を近づけることを考えるべきです。知財軽視の経営がいかに問題を引き起こしているかを具体的に経営陣に示し、知財重視の経営に変わることでいかに問題を解決でき、これまでにない新たな発展の道を歩むことが可能になる、ことを実感してもらうことが大切でしょう。 早期権利化によるベネフィットを求め、早期審査請求が増加しており、それに伴い公開前登録も増加しています。
早期審査請求による早期権利化することにより他社牽制効果があり模倣対策に力を発揮することは大きなベネフィットです。 しかし、それだけでなく、
こうしたことから、早期審査請求件数が増え、2019年には約2.3万件となり、2019年の審査請求数約23.5万件の10%弱を占めるまでになっています。 (特許行政年次報告書2020年版より) https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2020/index.html また、それに伴い、出願から1年半後に発行される公開公報が発行される前に登録されるケースが増えています。発行年毎における公開前登録の割合をみると、2002から2006年頃は1%に満たなかったのが、直近では約6%となっているとのことです。 特許庁の努力により審査待ち期間が大幅に短縮され、早期審査制度が充実したことにより、「特許出願すると1年半後に公開され、その後登録されるから、公開公報で他者権利をチェックして邪魔になりそうな出願には情報提供」という、これまでの常識が通用しない時代に突入しているのかもしれません。 毎年特許庁が公表する特許行政年次報告書では、特許登録件数上位200社の出願・審査関連情報が公表され、特許登録件数が指標とされています。そして、特許登録率を重視する流れもあります。
特許出願した発明が最終的にどの程度特許になっているかが重要だという考え方もあります。総合特許登録率(=審査請求率×特許登録率)という考え方です。 総合特許登録率を正確に出すのは大変であるため、特許行政年次報告書に公表されている最新年の審査請求率×最新年の特許登録率という簡易法で、特許行政年次報告書2020年版の特許登録件数上位200社の総合特許登録率を算出して、高い順に並べてみました。高いほど出願した発明が登録されていることになります。特許出願に関して、費用対効果が優れているということになるでしょう。 1位が東芝エレベータkアブ式会社、2位がマツダ株式会社、3位が東芝映像ソリューション株式会社でした。 毎年特許庁が公表する特許行政年次報告書では、特許登録件数上位200社の出願・審査関連情報が公表されています。特許行政年次報告書から、発明通信社は、特許登録率に着目し、特許登録率上位30 位をまとめ公表しています。2019 年版までが出ています。
2019 年における特許登録率上位30位、発明KAWARA版 第22号 2019年11月6日 https://www.hatsumei.co.jp/column/index.php?a=column_pdf_output&id=333 2018 年における特許登録率上位30位、発明KAWARA版 第20号 2018年11月7日 https://www.hatsumei.co.jp/column/index.php?a=column_pdf_output&id=292 2020年7月14日に、2020年版の特許行政年次報告書が公表されましたので、同じやり方で2020 年における特許登録率上位30位をまとめてみました。 特許登録率の上位をみると、1位が井関農機株式会社 97.8%(昨年2位96.4%)、2位が東芝エレベータ株式会社 95.3%(昨年5位94.3%)、3位が リンナイ株式会社 94.1%(昨年は特許登録件数上位200社外のためデータなし)でした。ちなみに、昨年1位(96.8%)だったユニ・チャーム株式会社は今年14位(91.5%)、昨年3位(94.7%)だった京セラドキュメントソリューションズ株式会社は今年15位(91.5%)でした。 札幌市内最大のイベントである「さっぽろ雪まつり」は、1950年に始まり、メイン会場の大通公園に大雪像が立ち並ぶことなどから人気が高く、例年国内外から200万人以上もの人が訪れているそうですが、「さっぽろ雪まつり実行委員会」は、2021年のさっぽろ雪まつりについて、規模を縮小しての開催を決定し、大雪像の建設は中止することを発表しました。残念です。
四国の温泉というと、やはり道後温泉(どうごおんせん)です。日本三古湯の一つといわれ、夏目漱石の小説『坊つちやん』にも描かれています。 四国に行くときは、高松空港を利用することが多かったのですが、松山空港も結構利用しました。知的財産協会の行事で何度か道後温泉に泊まりましたが、通常の出張時に道後温泉まで足を延ばすのはほとんどありませんでした。 松山空港の近くには、松山空港に分断される形で帝人の松山事業所があります。知的財産協会の何かの行事で訪問させていただいたときに、2010年のノーベル化学賞を受賞した根岸英一氏が東大工学部卒業後の1958年から69年まで帝人に在籍していたということで、受賞を祝うパネルが飾られていました。さすが帝人ですね。
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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