4月10日に行われたスピーダの「経営視点で再定義する新規事業の”非財務”的価値」と題するセミナーは「新規事業が生む非財務的(未財務)価値を経営視点でどう捉え、企業価値へとつなげるか」を主題に、ヤマハ発動機株式会社 執行役員CSOの青田氏と、オフィス アベツマ合同会社 代表(元・横河電機株式会社 執行役常務 マーケティング本部長)の阿部氏が、株式会社ユーザーベース執行役員の金子氏をモデレーターとして対談形式で議論したものでした。”非財務”的価値を“未財務”的価値と考えるのは、同感です。
以下、メモです。 非財務資本(未財務資本)とは、財務指標で捉えきれない価値要素を指すが、本来は「未」財務と捉えるべき。将来的に財務指標にも転化し得る潜在的な資本である。 大きくはブランド、知的資産(特許・営業ノウハウなど広範な知的財産含む)、人的資本の3要素が中心。 新規事業は短期的には売上・利益など財務成果が小さいが、同時に企業内に無形の価値(人的成長やブランド強化など)をもたらす。 人的資本の観点では、新規事業を通じて「資金繰りや市場変化に直面する」「専門分野を超えて役割を担う」といった経験を積める。これは大企業の次世代経営層の育成に直結する重要なメリット。 ブランドの観点でも、挑戦する姿勢や企業らしさ(パーパス・コアコンピテンス)と結びついた新規事業は、たとえ売上規模が小さくとも、企業の将来価値を高める要因になる。 既存事業の特許やノウハウが、別領域の“ブロック特許”として有望な新規ビジネスの種になる例がある(例:魚の自動給餌技術が他分野に応用できるなど)。 こうした活用には、人事や技術部門が自社の知的資産・人材スキルを可視化する仕組みと、部門横断的に連携する文化が必要。 社外との協業(オープンイノベーションやスタートアップとの連携)を進める際も、独自の知財が「組む意義」を生み出す重要な資産になる。 経営者には、組織内外への発信が求められる。 社内向けには「新規事業が将来どんな社会・顧客価値を創るか」をストーリーとして共有し、既存事業からの視線を「ただ稼いでいない」だけに留めさせないよう説明責任を果たす。 社外投資家・株主に対しては、短期的な財務指標のみならず、企業の長期的な成長ストーリーを見せることでPBR(株価純資産倍率)1倍割れなどを脱却し、企業価値を高める動きが必要。 経営者自身が「感性(美意識)と理性」の両軸を持ち、認知バイアスを超えて新たな価値を見出すことが重要。たとえばアートを通じて多面的に物事を捉える力を鍛えるなどのアプローチが挙げられる。 ESG(サステナビリティ)においても「担当部門がやるCSR」ではなく、会社全体で“自分ごと”化し、社会インパクトを生む事業づくりへと統合する発想が求められる。 新規事業の狙いを「将来の財務成果」だけでなく、「人的資本の成長」「ブランド価値強化」「知的財産の活用」といった未財務資本の創出・活用にも着目することが、大企業におけるイノベーション推進と企業価値向上の鍵になる。経営者・リーダーは、論語とそろばんの両立(公益と私益のバランス)を踏まえつつ、自社の潜在的アセットを掘り起こし、社内外に向けた明確なストーリーを描く必要がある。 セミナーの締めメッセージ 青田氏: 「新しいことやるのってすごく大変。でも今後、日本企業がちゃんと未来を創っていくには、越境しながらいろんな人と話をして、いろんなところで組み合わせを見つけていくのが大事。ヤマハ発動機の“リジェラボ”もその1つの場にしたい」 阿部氏: 「無形資産や未財務資本の価値に目を向けて、かつ挑戦を恐れないことが必要。“公益と私益の両立”を目指した、渋沢栄一が唱えたような経営を、日本企業こそ発信していける。『人間は理性だけじゃなく感性が大事』、そこを磨いてほしい」 経営視点で再定義する新規事業の”非財務”的価値 2025年4月10日(木)17:00〜18:30 https://jp.ub-speeda.com/seminar/20250410_cfcd/ Redefining the “Pre-Financial” Value of New Businesses from a Management Perspective The seminar hosted by SPEEDA on April 10, titled “Redefining the Non-Financial Value of New Businesses from a Management Perspective”, focused on the central theme of “how to perceive the non-financial (or pre-financial) value created by new businesses from a management standpoint, and how to connect that value to overall corporate value.” The discussion featured Mr. Aota, Executive Officer and CSO of Yamaha Motor Co., Ltd., and Mr. Abe, Representative of Office Abetsuma LLC (formerly Senior Managing Executive Officer and Head of the Marketing Division at Yokogawa Electric Corporation), with Mr. Kaneko, Executive Officer of Uzabase, Inc., serving as moderator. The idea of interpreting “non-financial” value as “pre-financial” value resonated deeply. Below are notes from the seminar:
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著者萬秀憲 アーカイブ
April 2025
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