特許権の間接侵害については、特許法次第101条に記載されています。
第101条(侵害とみなす行為) 次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。 一 特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為 二 特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であってその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為 三 特許が物の発明についてされている場合において、その物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為 四 特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為 五 特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であってその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為 六 特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為 その趣旨としては、正当な権原を有しないで特許発明と同一の発明を実施すると特許権や専用実施権の侵害(直接侵害)となるが、それにつながる行為も特許権や専用実施権の侵害(いわゆる間接侵害)とみなすことによって、直接侵害を未然に防止するため、とされています。 この間接侵害について理解を深めるためには、「特許権の間接侵害の理論」という橘雄介氏の博士論文(2018年)が参考になります。212頁の長文ですが。 特許権の間接侵害の理論 橘雄介 https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/69387/1/Yusuke_Tachibana.pdf 目次 第1 はじめに 特許権の間接侵害とは,典型的には,特許装置の部品を製造・販売する行為である。日本の特許法には間接侵害を定めた条文として101条1·4号と2·5号があるが,近年,課題に直面している。それは,2·5号の方では,裁判例がパブリック・ドメインにまで特許権が及ぶことを恐れて,間接侵害の範囲を制限的に解したが,これに対して,学説が何とか侵害の範囲の柔軟な拡張を試みているからである。他方,1·4号の方では,逆に,裁判例が間接侵害の範囲を拡張したため,学説がパブリック・ドメインとの折り合いを付けることを求めているからである。この特許権者の権利とパプリック・ドメインとの折り合いをどう付けるのかが現在の日本の間接侵害が抱える宿題ということになる。 では,以上の宿題が生じた原因,あるいは,十分に解決されていない原因は何だろうか。もしかすると,条文の要件が厳しく,柔軟な制度が自然に育つのを妨げていたことがあるかもしれない。新たな制度を謡論する際には,従来の制度を眺めても答えは出ないことがあるために,ある程度,法学の外側から制度を眺めることが必要になってくる。しかし,従来の議論は条文の縛りを受けたものだったため,そこを突破できなかったのかもしれないのである。 そこで,本稿では二つの意味で柔軟な環境に身を置いてみたい。ひとつは,研究対象分野の柔軟性であり,単純に教唆行為を特許権侵害と規定する米国法を研究対象とし,どのような実践がなされているのかを探りたい。もうひとつは,方法論の柔軟性であり,なるべく法学的なアプローチ以外のアプローチも使い,たとえば,法と経済学を視野にいれた市場指向のアプローチも使い,既存の法制度のバイアスを受けない間接侵害の基礎理論を探ってみたい。 以下,本稿では次のような検討の順序を辿る。最初に,日本法の歴史を概観し,現在どういう課題があるのかを具体的に探る。外国法を検討する際にも,日本の問題意識から研究することで,日本の問題の解決により役立つと思うからである。次に,米国法の歴史を概観し,その判例法の文脈を把握する。その上で,どういう開助や教唆行為が侵害となるのかについてその境界を探りたい。最後に,米国の実践を踏まえて,それが正当化できるものなのか,また,日本の課題の解決にどう使えるかを検討する。 第2 特許権の間接侵害に関する日本法の歴史と課題 1 はじめに 2 1959年法(昭和34年法)以前 3 1959年法(昭和34年法)と「にのみ」型時代 (1) 1959年法の立法経緯 (2) 1959年法 101 条の趣旨と基本構造 (3) 1959年法の改正経緯の概略 (4) 「にのみ」型間接侵害の規範の形成 4 2002年改正法と前期・多機能型時代 (1) 「にのみ」アプローチの課題 (2) 2002年改正と制度論~技術思想アプロ ーチと差止適格性アプロ ーチ 5 ビオグリタゾン事件と後期・多機能型時代 (1) ビオグリタゾン専件とその課題 (2) 多機能型間接侵害の再活用論 (3) このとき ,「にのみ」型間接侵害は何をしていたか?~蓋然性アプロ ーチ (4) 日本の歴史のまとめとその課題 第3 特許権の間接侵害に関する米国法の歴史 第4 行為類型に応じた教唆・割助行為の価値判断の分析 第5 間接侵害の効果論 第6 検討 第7 結び特許権の間接侵害の理論
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著者萬秀憲 アーカイブ
December 2024
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