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生成AIとの「壁打ち」で、新たな発明を創出する方法

​第6章:実践事例2──ソフトウェア・ITサービス系の発明創出

7/4/2025

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第6章:実践事例2──ソフトウェア・ITサービス系の発明創出
1. 事例紹介:大規模SaaS企業でのサービス企画
1-1. 新機能立案における要件定義→UX検討→AIとの壁打ち
近年、多くの企業がSaaS(Software as a Service)モデルを採用し、定期課金型でソフトウェアサービスを提供しています。クラウド環境下で機能を随時アップデートできるため、ユーザーの要望や市場の変化に合わせて高速に新機能を投入しやすい点が大きな特徴です。
ある大規模SaaS企業では、顧客管理(CRM)やプロジェクト管理のプラットフォームを提供していましたが、競争激化の中で「次の目玉機能」を生み出す必要がありました。そこで、アイデア発想からプロトタイプまでのスピードを高めるために生成AIとの壁打ちを試験的に導入したのです。
要件定義の初期段階
新機能の企画フェーズでは、まずユーザーストーリーを明確化することが重要となります。たとえば「営業担当が顧客とのやりとりを一括管理できる機能」や「チーム間でのタスクの優先度を自動調整する機能」など、どのような利用シーンで価値が生まれるのかを言語化しなければなりません。ここで、生成AIは以下のような形で活用されました。
  1. ニーズの整理
    • 市場調査データやユーザーのフィードバックをAIに要約させ、「顧客が抱える主な課題」「使われていない既存機能」などを抽出。
    • これにより要件定義チームは、開発リソースをどこに割くべきかを検討しやすくなった。
  2. アイデアの発散
    • 「顧客管理の効率化」「自動化」「UI/UX向上」などをキーワードに、AIに対してブレインストーミングを依頼。
    • AIは過去の類似サービスや導入事例を参考に、「メールテンプレート自動生成」「音声入力によるメモ取り連携」「カレンダーとの自動同期」といった、ある程度の具体案を提示した。
  3. UX検討での壁打ち
    • ユーザーフローやワイヤーフレームの段階で、AIに「このUI設計でユーザーは直感的に操作できるか? 懸念点は何か?」などと尋ね、初期仮説を揺さぶってもらう。
    • AIが「初回利用時のセットアップフローが複雑そう」「モバイル操作を想定していない」などの指摘をすることで、企画担当者がUI/UXを再考するきっかけを得た。
これらのステップを通じて、初期案をより多角的に検証できるようになり、要件定義書が完成するスピードも向上したといいます。もちろん、AIの指摘が必ず正しいわけではなく、「発想や見落としを補うきっかけ」として使うのが肝要です。
1-2. データプライバシーやコンプライアンス面の考慮
SaaSサービスの新機能を検討するうえで避けて通れないのが、データプライバシーやコンプライアンスに関する検討です。顧客の個人情報や商取引データなどを取り扱う場合、GDPR(欧州一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)をはじめとする世界各国の法規制への準拠が求められます。
AIとの「壁打ち」による整理
この企業では、法務チームと連携しながら、AIに対して次のようなやり方で法規制のポイントを整理していました。
  1. 要点の要約
    • GDPRやCCPAなどの長大な法律文書をAIに要約させ、サービス企画担当者が把握しやすい形でまとめる。
    • 「データ主体の権利」「データ移転制限」「匿名化・仮名化の要件」などの論点を抽出し、チェックリストを作成。
  2. コンプライアンスへの取り組み例の洗い出し
    • 他社(特に欧米のSaaS企業)がどのようなプライバシーポリシーやユーザー同意画面を設計しているかをAIにリサーチさせ、参考事例を収集。
    • 法務と協議しながら、自社サービスに合った取り組み方を検討。
  3. 想定されるリスクシナリオ
    • 「ログデータに個人情報が含まれるケース」「クッキー利用と追跡技術の扱い」「第三者提供の範囲」など、リスクシナリオをAIに挙げさせた。
    • 実際に潜在リスクを掘り起こす手がかりとなり、人間の側で優先順位をつけて対応策を考える。
ただし、AIが法的に完全な回答をできるわけではありません。あくまで長文の法規制資料や業界事例を短時間で俯瞰し、考慮漏れを減らすのが目的です。最終的には法務部門やコンプライアンス担当が責任をもって審査し、具体的な規約やプライバシーポリシーを策定します。
1-3. AI提案を「読み解く」プロセス
生成AIからの提案は多岐にわたり、文面だけ見ると一見正しそうに感じられることが少なくありません。そこで、このSaaS企業では「AI提案を読み解く」ためのプロセスを確立し、鵜呑みにしない工夫を取り入れました。
  • 提案の裏付けを質問する
    AIが「こういう機能がある」と主張した場合、「その参考事例はどこか」「どのようなデータに基づいた意見か」を再質問。AIの回答が曖昧ならば要注意とし、裏付けを社内外の文献や専門家で再確認。
  • 複数回のプロンプトで検証する
    1回の質問ではなく、同じテーマについて少し角度を変えて再質問する。「ユーザビリティ向上策をもっと詳しく」「同業他社の失敗事例は?」など、段階的に深掘りすることで、提案のブレや一貫性のなさが見えてくることもある。
  • 定例会議でのディスカッション材料にする
    AIの提案リストを社内Wikiやタスク管理ツールに貼り、チームでコメントをつけ合う場を設ける。AIによる「壁打ち」→人間同士の議論という二段構えでアイデアを磨く運用が効果的。
以上の取り組みにより、新機能に関する要件定義は数週間で固まり、プロトタイプ作成・テストフェーズへ移行するスピードも上がったといいます。AIはあくまでも「一次情報の整理」や「アイデアの叩き台」を担う存在であり、企画担当やエンジニアがその提案を吟味しながらブラッシュアップしていくという役割分担が成功の鍵でした。
 
2. 事例紹介:スタートアップのAIサービス開発
2-1. 自社AIサービス開発における競合調査やアイデア拡張
次の事例は、生成AI自体を活用したクラウドサービスやアルゴリズムを開発しているAI系スタートアップです。自社が提供する製品がAI技術そのものに基づいているため、最新の研究動向や競合サービスを絶えずウォッチしながら開発を進める必要があります。
競合調査の高速化
スタートアップのメンバーは少数精鋭であることが多く、競合調査に割けるリソースが限られます。そこで、社内で生成AIを活用した調査フローを確立し、以下のような手順を踏んでいました。
  1. キーワード抽出・要約
    • ベンチマーク対象となる海外AI企業や論文をAIに読み込ませ、「主要なアルゴリズムの特徴」「提供されているAPIのスペック」「料金プラン・ビジネスモデル」などを要約させる。
    • 人間の担当者が興味を持ったポイントだけをさらに詳細に調べればよいので、時間を節約。
  2. プロダクトレビューの収集
    • ユーザーレビューサイトやSNS上のフィードバックをAIにクロールさせ、「ユーザーがどんな点を称賛しているか」「どんな不満や要望が多いか」を抜粋。
    • 自社製品との比較をしやすい形でスプレッドシートやNotionなどに整理。
  3. 差別化アイデアの発散
    • 「競合Aと同様のアルゴリズムを使いつつ、コストを30%下げられるには?」「UIで独自性を出すには?」とAIに問いかける。
    • AIがまとめたリストをチームミーティングで議論し、自社の強みを活かせる方針を探る。
こうしたフローにより、メンバーが短時間で競合情報を把握し、差別化可能な領域を素早く絞り込めるようになったといいます。もちろん、最終的な戦略立案は経営陣が責任を負いますが、情報収集の初期段階をAIに任せられるのはスタートアップにとって大きなメリットです。
2-2. アルゴリズム特許、ビジネスモデル特許などの可能性検討
AIサービスを開発する際に重要なのが、アルゴリズム特許やビジネスモデル特許をどう扱うかです。とくに米国ではビジネスモデル特許が盛んに出願され、日本でもソフトウェア関連発明が特許対象になり得るケースが増えてきました。
このスタートアップでは、技術顧問の弁理士や知財担当と連携しながら、生成AIを活用した特許戦略の検討を行っていました。以下のようなフローが実践されていたようです。
  1. 先行技術調査(アルゴリズム編)
    • ディープラーニングや自然言語処理に関する特許公報や学術論文をAIに要約させ、関連性の高いものをリストアップ。
    • 自社が開発しているモデルの特徴(例:自己注意機構を改良した特殊なアーキテクチャ)と先行例を比較し、どこに新規性があるかを見極める。
  2. ビジネスモデル発明の整理
    • たとえば「サブスクリプション課金で、ユーザーごとの学習モデル最適化を自動で行う仕組み」など、ビジネス上のアイデアが権利化できるかを検討。
    • AIに「このアイデアと似たようなビジネスモデル特許はあるか?」と尋ねると、それらしき特許を教えてくれる場合がある(ただし精度には注意)。
    • 新規性がありそうなら、詳細なクレーム構成を考える際にAIから下書きを得ることも可能。
  3. 出願準備
    • AIにより下書きされた「発明の要旨」や「実施例」を元に、専門家が明細書を作り込む。
    • 細かい法律用語やクレーム戦略は専門家が最終調整しつつ、AIは補助的に文章作成や要約などを担当。
このように、ソフトウェアやAIアルゴリズム特有の特許化プロセスでも、生成AIがサーチや要約、ドラフト作成の面で活躍できることが示されています。一方で、AIの回答には誤情報や抜け漏れがありうるため、最終的な権利戦略の決定は人間が責任を持つ必要があります。
2-3. チーム内でAIを活用するルールづくり
スタートアップの開発チームは、スピード重視で仕事を進めるため、「気軽にAIと壁打ちしてみよう」という空気が醸成されやすい反面、情報漏洩やノウハウの流出リスクが高まる懸念もあります。そこで、チーム内では以下のようなルールを定めたといいます。
  1. 入力データの扱い
    • 機密情報やコアアルゴリズムのコード断片を、外部サービスのAIに直接入力するのは原則禁止。
    • 必要に応じて社内専用のAIツールを構築し、オンプレミス環境で機密データを扱う。
  2. ログの管理とレビュー
    • AIとのやり取りは自動ログ保存されるように設定し、定期的にセキュリティ担当がレビュー。
    • 万一、不適切な情報を入力してしまった場合は速やかにログ削除やモデル再学習のブロック措置を検討。
  3. 責任の所在を明確に
    • AIの回答をもとに意思決定を行う際は、最終的な判断者が誰かを明確にする。
    • AIが提示した技術的・法的情報が誤りだった場合でも、責任をAIに押し付けないという姿勢を徹底。
このようなルールによって、AI活用のメリット(スピードや発想支援)を享受しつつ、リスクを最小化することが可能になるわけです。
 
3. ソフトウェア開発の壁打ちポイント
3-1. アーキテクチャ設計支援、モジュール分割の議論
ソフトウェア開発における大きな課題の一つが、システムアーキテクチャの設計やモジュール分割です。複雑な要件を満たしながら拡張性や可読性を確保し、バグリスクを低減する必要があります。生成AIとの壁打ちは、以下のような形で役立つケースがあります。
  1. 参考アーキテクチャの要約
    • 既存の類似プロジェクトやオープンソースソフトウェアのアーキテクチャ資料をAIに要約させ、他社事例の良い部分を学ぶ。
    • ドキュメントが膨大でも、AIに要点を抽出させれば、設計者が短時間で把握しやすくなる。
  2. モジュール分割の仮説提案
    • 「フロントエンド・バックエンド・DB」の三層構造にとどまらず、マイクロサービス化やサーバーレスなど、さまざまな選択肢がある。
    • AIに「高トラフィックを想定したスケーラブルな設計案」を問えば、ロードバランサー構成やAPIゲートウェイの設置など、網羅的なアイデアを提示することもある。
  3. 設計上の課題や注意点の列挙
    • 例:「データの整合性」「トランザクション管理」「バックアップ・リカバリプラン」「複雑な依存関係の管理」など、見落としがちな論点をAIに指摘させる。
    • 実際に最良の設計を選ぶのはエンジニアだが、AIに論点リストを作らせることで、討議漏れを減らせる。
3-2. ユーザーストーリーの生成と検証
ソフトウェア開発では、ユーザーストーリーを使ったアジャイル手法が広く定着しています。ユーザーストーリーは「○○として、私は△△がしたい。なぜなら□□だからだ」という形式でユーザー視点の機能要求を表現します。ここでも生成AIは以下のように活用できます。
  1. ユーザーストーリーのバリエーション作成
    • 「メインユーザーがプロジェクトマネージャーの場合、彼らはどんな課題を抱えているか?」「新人エンジニアはどんな使い方をするか?」とAIに問いかけ、複数のペルソナ(利用者像)を創出。
    • ペルソナごとにユーザーストーリーを考える手間が省けるため、発散的にストーリーを集めやすい。
  2. ストーリーの優先度整理
    • 生成AIに「緊急度と開発難度」の観点でユーザーストーリーを分類させ、最もインパクトが大きそうなものを検討対象に選ぶ。
    • あくまでAIの分類は参考程度だが、スプリント計画やバックログ整備を効率化できる。
  3. 検証プロセスのヒント
    • 「このユーザーストーリーが実現されているかどうかを確かめるテストシナリオを挙げてほしい」とAIに依頼すれば、受け入れ基準(Acceptance Criteria)の草案が作成される。
    • 実際にはエンジニアやテスターが精査し、具体的なテストケースに落とし込むが、最初のたたき台として役立つ。
3-3. リスクアセスメントやセキュリティ観点の確認
ソフトウェア開発では、セキュリティリスクや障害リスクの評価が不可欠です。インシデントが発生すれば、サービス停止や顧客情報流出など甚大な被害を招く恐れがあるため、早い段階でリスクを把握し、対策を講じる必要があります。
  • リスクの洗い出し
    • AIに「Webアプリケーションの一般的な脆弱性」をリストアップさせたり、「この機能実装でありがちなセキュリティ上の落とし穴は?」と質問する。
    • 代表的な脆弱性(SQLインジェクション、XSS、CSRFなど)はAIが比較的正確に挙げてくれるが、最新の攻撃手法や特殊な環境依存の脆弱性は漏れる可能性があるため、セキュリティ専門家との併用が望ましい。
  • 障害時のフェイルオーバーやバックアップ戦略
    • 「高可用性を確保するための冗長化構成」や「障害復旧の手順例」をAIに聞いてみることで、一般的なベストプラクティスの整理が可能。
    • 実際のシステム要件に合わせて最適な設計を選ぶのは人間の仕事だが、多くのシナリオの可能性を俯瞰するのには有効。
  • 脆弱性スキャナや監査ツールとの連携
    • AI自体が完全にセキュリティ診断を行うわけではないが、脆弱性スキャナやログ監査ツールの導入手順をまとめたり、各ツールの比較評価を下書きしてくれるなど、調査・企画フェーズの補助として役に立つ。
これらのプロセスで得られるメリットは、見落としの減少と検討スピードの向上です。ただし、先ほども述べたように、ソフトウェアセキュリティの分野は技術革新と攻撃手法の変化が激しいため、AIの知識が最新であるとは限りません。最終的には専門家の判断が不可欠となります。
 
まとめと次章へのブリッジ
本章では、ソフトウェア・ITサービス系の発明創出にフォーカスし、以下のような事例とポイントを紹介しました。
  • 大規模SaaS企業でのサービス企画
    • 新機能の要件定義やUX検討で、AIに対してブレインストーミングや論点抽出を依頼。
    • データプライバシーやコンプライアンス面の考慮もAIを活用して広く洗い出し、最終的な判断は法務と連携。
    • AI提案を鵜呑みにせず、複数回のプロンプトや社内ディスカッションで精査する運用を確立。
  • AIスタートアップでの自社サービス開発
    • 競合調査や差別化アイデアの発散をAIに任せることで、高速な情報収集と意思決定を実現。
    • アルゴリズム特許やビジネスモデル特許の検討でもAIが要約や先行例の検索をサポート。
    • チーム内でのルールづくり(機密情報の扱いなど)を行い、リスクを管理しながらAIを活用。
さらに、ソフトウェア開発全般での壁打ちポイントとして、アーキテクチャ設計支援、モジュール分割議論、ユーザーストーリーの生成・検証、リスクアセスメントやセキュリティ観点の確認などを挙げました。いずれの場合でも、生成AIが過去の知見やベストプラクティスを要約して提案することで、開発チームの検討スピードを底上げできますが、やはり最終的な責任は人間のエンジニア・企画担当・法務が担うことになります。
次章以降では、より上級編として、複数のAIエージェントを組み合わせる方法や、研究開発マネジメントとの融合など、発明創出プロセスをさらに高度化するトピックを扱います。ソフトウェア・ITサービスでの事例も引き続き活用しながら、どのように「壁打ち」をシステム的に発展させられるかを探っていく予定です。
 

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    萬 秀憲

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