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​特許の読み方

特許の読み方(7)発明の内容を理解する

7/8/2020

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事例
 発明の内容を理解し、権利範囲を確認してみましょう。
 それほど複雑なものではありません。発明特定事項はひとつです。
【特許の名称】 吸水性複合体の製造方法
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸および/またはその塩を主成分とする水溶性単量体と、光重合開始剤と、架
橋剤と、を含む組成物を、通気性を有するシート状基材の表面に塗工する第1の工程と、
 不活性ガス雰囲気下で、前記シート状基材に紫外線を照射して前記水溶性単量体を重合させる第2の工程と、
を有する吸水性複合体の製造方法において、
前記第1の工程後に、前記シート状基材の裏面側から表面側に向けて不活性ガス流を流すことを特徴とする吸水性複合体の製造方法。
【請求項2】(省略)


技術的な前提知識
 高分子化合物は,その構成単位に相当する低分子化合物を互いに多数結合させることによってつくることができる。この反応を一般に重合反応,出発物となる低分子化合物をモノマーmonomer(単量体),生成する高分子化合物をポリマーpolymer(重合体)という。
アクリル酸および/またはその塩は、重合(架橋)させてポリマー(重合体)とすることで高い吸水性能が発揮され、吸水性樹脂とも呼ばれる。
 
発明の内容を理解する
  【従来の技術】が、【0002】から【0006】まであり、長いですが、【0005】だけ読むと必要な事項はわかります。
【0002】
水分吸収性の素材として、自重の数十倍から数百倍の水を吸収する吸収性樹脂(または高吸収性樹脂、SAP:Super Absorbent Polymer)が開発されており、生理用品や紙おむつ(使い捨て紙おむつ)等の衛生材料をはじめとして、農園芸用分野、鮮度保持等の食品分野、結露防止剤等の産業分野において幅広く利用されている。このような水分吸収性素材は、シート状の基材に吸収性樹脂を固着して製造した吸水性複合体として多く利用されている。
【0003】
このような吸水性複合体は、紙、パルプ、多孔性フィルムあるいは不織布等の基材シート上に、架橋されたポリアクリル酸等からなる吸収性樹脂粉末を、均一に分散させ固着させるという方法で製造されることが一般的に行われている。基材シートに対する吸収性樹脂の固着方法としては、例えば吸収性樹脂をティッシュ、綿等でサンドイッチにする方法や 、パルプと吸収性樹脂粉末を混合した後にエンボス加工等の圧着処理を行う方法等が採用されている。
【0004】
しかし、これらの製造方法においては、樹脂粉末を基材上に均一に分散させる必要があるが、基材上に安定性よく固定することが困難であり、分散後も一部局所に集合化することが多く、また基材から粉末が漏れやすい上、吸水後の膨潤ゲルが流動して使用感を悪化させることがあった。このような樹脂の移動を防ぐために、吸収性樹脂を接着剤等で基材に接着させることも考えられたが、この場合接着剤によって樹脂が吸水膨潤してしまい、吸水性能が発揮できなくなってしまう。さらに、樹脂を粉末として用いるため、製造時の取り扱いが煩雑で、また基材上への均一な分散を効率よく行うプロセスは製造コストも割高であった。
【0005】そこで、このような問題を改善した吸水性複合体の製造方法として、例えば、アクリル酸およびアクリル酸塩と、熱分解型ラジカル重合開始剤等を含む単量体混合物の水溶液を基材シート上に塗工し、不活性ガス雰囲気中で加熱処理あるいは電磁放射線の照射を行って単量体を重合させ、基材シートに吸収性ポリマーが固着された吸水性複合材を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開昭62-22810号公報(第3-5頁)
 
 
【発明が解決しようとする課題】はシンプルです。
 
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記特許文献1の製造方法では、アクリル酸塩等の単量体の重合反応に時間を要するため、吸水性樹脂が形成されるまでの間に、単量体が基材シートの内部に拡散してしまう。その場合、重合が十分行われずに、形成される吸収性樹脂には単量体の残存量(残存モノマー量)が多い上、製造される吸水性複合体では水分等が基材表面の吸水性樹脂にしか吸収されないため、吸水性能が劣るという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、残存モノマーが少なく、吸水性能に優れる吸水性複合体の製造方法を提供することである。
 
 
【課題を解決するための手段】には、「前記第1の工程後に、前記シート状基材の裏面側から表面側に向けて不活性ガス流を流すことを特徴とする。」と、発明の特徴が書かれています。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するための本発明による手段は、
アクリル酸および/またはその塩を主成分とする水溶性単量体と、光重合開始剤と、架橋剤と、を含む組成物を、通気性を有するシート状基材の表面に塗工する第1の工程と、
 不活性ガス雰囲気下で、前記シート状基材に紫外線を照射して前記水溶性単量体を重合させる第2の工程と、
を有する吸水性複合体の製造方法において、
前記第1の工程後に、前記シート状基材の裏面側から表面側に向けて不活性ガス流を流すことを特徴とする。
【0010】
 本発明によれば、第1の工程後に、シート状基材の裏面側から表面側に向けて不活性ガス流を流すことにより、シート状基材内部の空気が速やかに、且つ確実に不活性ガスで置換される。また、シート状基材表面に塗布された組成物が、シート状基材内部に拡散するのを防止することができる。従って、重合反応を好適に、且つ速やかに実施することができ、残存モノマー量が少なく吸収性能のよい吸水性複合体を製造することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
〔第1の実施の形態〕
本実施の形態において、吸水性複合体は、主に、アクリル酸および/またはアクリル酸塩(以下、アクリル酸系単量体という)を主体とする水溶性単量体と、光重合開始剤と、架橋剤と、シート状基材(以下、基材という。)とを用いて、図1にフローチャートで示す製造工程を経て製造される。
【図1】

Picture
そして、効果については、【0079】【0080】にも記載があります。
 
【0079】
【発明の効果】
 本発明の吸水性複合体の製造方法によれば、アクリル酸及び/またはその塩を主成分とする水溶性単量体と、光重合開始剤、架橋剤を含む組成物をシート状基材に塗工した後、シート状基材の裏面側から表面側に向けて不活性ガスを流すことにより、基材内部のガス交換を確実且つ速やかに行うことができる。また、シート状基材表面に塗布された組成物が、シート状基材内部に拡散するのを防止することができる。
 従って、酸素のより少ない環境を速やかに形成することにより、水溶性単量体の重合反応をより好適に行うことができる。また、速やかにガス交換ができるので、重合工程をより速やかに行うことができ、水溶性単量体が基材内部に含浸することを防止できる。その結果、水溶性単量体に、より好適に紫外線を照射して重合させることができ、基材表面において表面積が大きく、残存モノマーの少ない吸水性樹脂を形成できるので、吸水性能のよい吸水性複合体を製造できる。
【0080】
加えて、水溶性単量体が不連続に基材上に塗工されるので、形成される吸水性樹脂の表面積が大きくなる。また、基材上を樹脂が覆って柔軟性を損ったり、製造される吸水性樹脂が吸水膨潤した際に吸水性複合体の感触に違和感を生じたりすることも低減される。従って、吸水性能がよく感触等の使用感のよい吸水性複合体を製造できる。
 

特許請求の範囲の読み⽅
 
 前置き部分を確認します。
 このケースは、「・・・塗工する第1工程と・・・重合させる第2工程を有する吸水性複合体の製造方法において」と、「・・・・において」という前提部分が非常に長くなっています。従来公知(出願前に知られている)の部分を「…において」として、その後に発明の特徴部(従来技術と異なる部分)が記載されています。
 「前記第1の工程後に、前記シート状基材の裏面側から表面側に向けて不活性ガス流を流すこと」が発明の特徴部(発明特定事項)です。
 
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸および/またはその塩を主成分とする水溶性単量体と、光重合開始剤と、架
橋剤と、を含む組成物を、通気性を有するシート状基材の表面に塗工する第1の工程と、
 不活性ガス雰囲気下で、前記シート状基材に紫外線を照射して前記水溶性単量体を重合させる第2の工程と、
を有する吸水性複合体の製造方法において、
前記第1の工程後に、前記シート状基材の裏面側から表面側に向けて不活性ガス流を流すことを特徴とする吸水性複合体の製造方法。
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    萬秀憲

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