特許の権利範囲を示す特許請求の範囲には、構成要件しか書かれていませんが、同じ構成要件であっても、特許の権利範囲は明細書に書かれている「発明の課題や作用効果」によって、無効審判で特許が有効になったり無効になったりすることがあります。発明の課題が進歩性判断に影響するのです。
特許請求の範囲が特許の権利範囲を示すのに、そこに書かれていないことがどうして進歩性判断に影響するのか疑問に感じる方もおられるでしょう。 実は、平成20年頃までは、発明の課題が進歩性判断に影響することはありませんでした。それ以降に、発明の課題が進歩性判断に影響する実務が定着しました。 特許庁の審査基準では、「主引用発明」と「副引用発明」の課題が異なっていれば,“組み合わせの動機付け”が否定され、進歩性ありの方向に判断することになっています。しかしながら、「本願発明」と 「主引用発明」の課題が異なっていることが、進歩性判断に与える影響については、記述はありません。 実務上は、特許請求の範囲の文言が同一で、発明の課題が異なる「本願発明A」(課題A)と「本願発明B」(課題B)について、引用文献に課題Aが書かれた「主引用発明」(主引用例)があり、課題Aが書かれた「副引用発明」(副引用例)と組み合わせると構成要件が満たされる場合、「本願発明A」(課題A)は容易想到と判断され進歩性なしとなりますが、「本願発明B」(課題B)は想到困難と判断され進歩性ありとなります。 明細書の中に書かれた発明の課題が進歩性判断に影響することがありますので、特許を理解する場合は、【発明が解決しようとする課題】、【発明の効果】もしっかり読むようにしましょう。 下記の動画による説明が参考になります。無料で聴講できます。 弁護士高石秀樹の特許チャンネル「本件発明の課題が、何故、進歩性判断に影響するのか?(特許法29条2項、容易想到性、動機付け、阻害事由、引用発明)」 https://www.youtube.com/watch?v=jIR0ckvmv3c&t=0s 知財実務オンライン(第11回):「発明の課題に関する諸問題を裁判例から深堀りする~裁判例等研究の重要性と活用~」 https://www.youtube.com/watch?v=sv0LM7aolT4&t=3458s
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Author萬秀憲 ArchivesCategories |