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​特許の読み方

特許の読み方(12) 補正

20/8/2020

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​ 特許請求の範囲をよく見ると、下線が引かれている部分があります。この部分は、審査の過程で補正された部分になります。特許査定されるために、下線が引かれた部分が重要な役割を果たしていることが多いことから、特許請求の範囲を読むときには、この下線が引かれた部分に注意して権利範囲を理解することが大切になります。
 
 特許第4240281号請求項1では、「通気性を有する」「前記第1の工程後」「の裏面側から表面側」の三か所にあります。
 
【請求項1】
アクリル酸および/またはその塩を主成分とする水溶性単量体と、光重合開始剤と、架橋剤と、を含む組成物を、通気性を有するシート状基材の表面に塗工する第1の工程と、
 不活性ガス雰囲気下で、前記シート状基材に紫外線を照射して前記水溶性単量体を重合させる第2の工程と、
 を有する吸水性複合体の製造方法において、
 前記第1の工程後に、前記シート状基材の裏面側から表面側に向けて不活性ガス流を流すことを特徴とする吸水性複合体の製造方法。
 
出願当初の明細書では、下記のようになっていました。
【請求項1】
 アクリル酸および/またはその塩を主成分とする水溶性単量体と、光重合開始剤と、架橋剤と、を含む組成物を、シート状基材の表面に塗工する第1の工程と、
 不活性ガス雰囲気下で、前記シート状基材に紫外線を照射して前記水溶性単量体を重合させる第2の工程と、
 を有する吸水性複合体の製造方法において、
 前記第2の工程より前或いは前記第2の工程時に、前記シート状基材に向けて不活性ガス流を流すことを特徴とする吸水性複合体の製造方法。
 
審査官から拒絶理由通知書が出され、それに対応して補正された部分が下線の引かれた部分です。
 
「シート状基材」から「通気性を有するシート状基材」への補正については、審査官から「『シート状基材』について何ら特定されていないが、本願発明の作用効果が奏されるためには、上記基材中に不活性ガスを流通させることが必要であり、すなわち、上記基材は、通気性のある、シート状の繊維質基材、あるいはシート状の多孔質基材であることが必要であるものと読み取れる。」との指摘を受けたことへ対応したものです。
 
「前記第2の工程より前或いは前記第2の工程時」から「前記第1の工程後」への補正、「前記シート状基材に向けて」から「前記シート状基材の裏面側から表面側に向けて」への補正についても、審査官から「本願発明の詳細な説明の記載からみて、本願発明の作用効果(単量体混合物の基材への含浸が抑制され、基材表面において好適に単量体の重合が行われること)が奏されるためには、不活性ガス流の流す方向は、シート状基材に向く任意の方向でなく、塗工された基材の裏面側(塗工面と反対側)から表面側(塗工面側)への方向であることが必要であるものと読み取れる。 また、同様に、不活性ガス流を流す時期は、第1の工程(塗工)後であることが必須であるものと読み取れる。」と指摘されたことを受けてのものです。
 
特許査定されるために、下線が引かれた部分が重要な役割を果たしていることが多いことから、特許請求の範囲を読むときには、この下線が引かれた部分に注意して権利範囲を理解することが大切になります。
必要に応じて、「拒絶理由通知書」とそれに対する「意見書」を読むことで一層理解が深まります。
 

​
拒絶理由通知書 (特許出願2002-259208)
 
 
                                                                     P.1
               拒絶理由通知書
 
 
 特許出願の番号      特願2002-259208
 起案日          平成19年11月30日
 特許庁審査官       芦原 ゆりか       9161 4J00
 特許出願人代理人     荒船 博司(外 1名) 様
 適用条文         第29条第1項、第29条第2項、第36条
 
 
 この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見が
ありましたら、この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してくだ
さい。
 
                理 由
 
1.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第
1号に規定する要件を満たしていない。
 
2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国にお
いて、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆
に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特
許を受けることができない。
 
3.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国にお
いて、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆
に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野に
おける通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、
特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
     記   (引用文献等については引用文献等一覧参照)
 
・理由1
 以下の2点において、請求項1-3には、発明の詳細な説明に記載された、発
明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載し
た範囲を超えているので、請求項1-3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載
されたものではない。
(1)請求項1-3においては、「シート状基材」について何ら特定されていな
いが、本願発明の作用効果が奏されるためには、上記基材中に不活性ガスを流通


 
 
                                                                     P.2
させることが必要であり、すなわち、上記基材は、通気性のある、シート状の繊
維質基材、あるいはシート状の多孔質基材基材であることが必要であるものと読
み取れる。
(2)本願発明の詳細な説明の記載からみて、本願発明の作用効果(単量体混合
物の基材への含浸が抑制され、基材表面において好適に単量体の重合が行われる
こと)が奏されるためには、不活性ガス流の流す方向は、シート状基材に向く任
意の方向でなく、塗工された基材の裏面側(塗工面と反対側)から表面側(塗工
面側)への方向であることが必要であるものと読み取れる。
 また、同様に、不活性ガス流を流す時期は、第1の工程(塗工)後であること
が必須であるものと読み取れる。
 
 
・理由2、3
・請求項1-3
・引用文献等1、2
・備考
 引用文献1、2には、塗布されたモノマの重合を、重合を迅速かつ定量的に進
めるために、窒素気流下で行うことが望ましいことが記載されている。
 
 
 引用文献1:特許請求の範囲、2頁4欄3~15行、3頁5欄11~41行、
5欄最終行~6欄22行等
 引用文献2:特許請求の範囲、【0027】等
 
 
           引 用 文 献 等 一 覧
1.特公平5-58030号公報
2.特開平10-113556号公報
------------------------------------
           先行技術文献調査結果の記録
 
・調査した分野  IPC C08J7/00-18,D06M13/00-15/72
         
・先行技術文献  特開昭63-063459号公報
         特開平07-292142号公報
         特開平02-173127号公報
 
 この先行技術文献調査結果の記録は拒絶理由を構成するものではありません。
 


 
 
                                                                     P.3
 この拒絶理由通知の内容に関するお問い合わせ、または面接のご希望がござい
ましたら下記までご連絡下さい。
特許審査第3部高分子 芦原ゆりか
TEL.03(3581)1101 内線3493
FAX.03(3501)0698
 
 
 
 
 
 
意見書 (特許出願2002-259208)
 
 
                                                                             P.1
【書類名】      意見書
【提出日】      平成20年 2月 1日
【あて先】      特許庁審査官 芦原 ゆりか 殿
【事件の表示】
  【出願番号】   特願2002-259208
【特許出願人】
  【識別番号】   390029148
  【氏名又は名称】 大王製紙株式会社
【代理人】
  【識別番号】   100090033
  【弁理士】
  【氏名又は名称】 荒船 博司
【発送番号】     624461
【意見の内容】
1.拒絶理由の要点
 平成19年11月30日付(起案日)の拒絶理由通知において審査官が指摘した拒絶理
由は以下の通りです。
(理由1)本出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する
要件を満たしていない、というものです。
(理由2)本願請求項1~3に係る発明は、下記の引用文献1、2に記載された発明であ
るから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というも
のです。
(理由3)本願請求項1~3に係る発明は、下記の引用文献1、2に記載された発明に基
いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の
規定により特許を受けることができない、というものです。
引用文献1:特公平5-58030号公報
引用文献2:特開平10-113556号公報
 本出願人は、上記ご指摘に鑑み、本意見書と同日付提出の手続補正書により明細書の特
許請求の範囲その他を補正しましたので、以下、補正後の特許請求の範囲に基づいて意見
を申し述べます。
 
2.補正前の請求項(旧請求項)と補正後の請求項(新請求項)との対応関係について
  新請求項1 :旧請求項1+旧請求項2、の内容をより明確にしたもの
  新請求項2 :旧請求項3
 
3.本願発明の特徴
 同日提出の手続補正書で補正した請求項1は、下記に示す通りのものです。なお、下線
は今般の補正箇所を示します。
  [請求項1]
 (a)アクリル酸および/またはその塩を主成分とする水溶性単量体と、光重合開始剤
と、架橋剤と、を含む組成物を、通気性を有するシート状基材の表面に塗工する第1の工
程と、
 (b)不活性ガス雰囲気下で、前記シート状基材に紫外線を照射して前記水溶性単量体
を重合させる第2の工程と、
 を有する吸水性複合体の製造方法において、
 (c)前記第1の工程後に、前記シート状基材の裏面側から表面側に向けて不活性ガス
流を流すことを特徴とする吸水性複合体の製造方法。
 そして、このような構成とすることにより、
 (イ)シート状基材内部の空気が速やかに、且つ確実に不活性ガスで置換される、
 (ロ)シート状基材表面に塗布された組成物が、基材内部に拡散するのを防止すること


 
 
                                                                             P.2
ができる、
 (ハ)従って、重合反応を好適に、且つ速やかに実施することができ、残存モノマー量
が少なく吸収性能のよい吸水性複合体を製造することができる、
という効果を有するものであります。
 
4.補正の根拠の明示
 [請求項1]
 (a)「通気性を有するシート状基材」との補正事項は、出願当初明細書の段落番号0
024の「本発明で用いる基材(シート状基材)は・・・通気性のある基材を使用する。
」との記載に基づくものです。
 (c)「前記第1の工程後に、前記シート状基材の裏面側から表面側に向けて不活性ガ
ス流を流す」との補正事項は、出願当初明細書の段落番号0012の「・・・プレポリマ
ーAを、基材上に塗工する(第1の工程、・・・」との記載、及び段落番号0045の「
プレポリマーAの塗布後に基材にガスを流す場合、・・・基材の裏面側から表面側に向か
って不活性ガスを流す・・・」との記載に基づくものです。
 
 また、段落番号0010、及び0079の「また、シート状基材表面に塗布された組成
物が、シート状基材内部に拡散するのを防止することができる。」との補正事項は、出願
当初明細書の段落番号0045の「プレポリマーAの塗布後に基材にガスを流す場合、基
材表面に塗布されたプレポリマーAが基材内部に拡散することを防止するため、基材の裏
面側から表面側に向かって不活性ガスを流すとより好ましい。」との記載に基づくもので
す。
 
 その他の補正は、上記の補正を行ったことに伴い、整合性を確保するための補正であり
ます。
 
 以上の通り、上記各補正は、新規事項を追加するものではなく、出願当初明細書または
図面に記載された範囲内の補正であるため、適法なものと思料致します。
 
5.本願発明が特許されるべき理由
5-1.理由1
(1)本願発明の作用効果が奏されるためには、「シート状基材」中に不活性ガスを流通
させることが必要である、とのご指摘については、上記の通り、「通気性を有するシート
状基材」と補正を行いました。
 
(2)本願発明の作用効果が奏されるためには、不活性ガス流の流す方向は、塗工された
基材の裏面側から表面側への方向であることが必要である、また、不活性ガス流を流す時
期は、第1の工程後であることが必須である、とのご指摘については、上記の通り、「前
記第1の工程後に、前記シート状基材の裏面側から表面側に向けて不活性ガス流を流す」
と補正を行いました。
 
 従って、特許法第36条第6項第1号の拒絶理由は解消したものと思料致します。
 
5-2.理由2、3
(1)引用文献の説明
 引用文献1(特公平5-58030号公報)及び引用文献2(特開平10-11355
6号公報)には、繊維質の基材に吸収性ポリマーが塗布された吸収性物品において、吸収
性ポリマーの重合を迅速かつ定量的に進めるために、窒素気流化で行うことが望ましいこ
と、が記載されております。
 


 
 
                                                                             P.3
(2)引用文献との対比
 引用文献1及び引用文献2には、本願請求項1に係る発明特定事項(c)である「前記
第1の工程後に、前記シート状基材の裏面側から表面側に向けて不活性ガス流を流す」に
ついて、何ら記載されておらず、示唆すらもございません。
 具体的には、引用文献1及び引用文献2に記載された発明では、重合を窒素等の気流下
で行うことが開示されているのみであり、その方向については何ら記載されておりません
。
 これに対して、本願請求項1に係る発明は、上記発明特定事項(c)を具備することに
より、シート状基材に対して所定方向から不活性ガス流が流されることとなり、このため
、シート状基材上に塗布された組成物の重合を好適に行うことのできる環境を形成するこ
とを可能とするものであります。
 すなわち、基材内部の空気を不活性ガスで速やかに、且つ確実に置換することができ、
より酸素の少ない環境を形成して水溶性単量体の重合反応を好適に行うことができるとい
う効果を奏するものであります。また、単量体混合物が基材内部に含浸するのを防止でき
るといった効果を奏するものであります。
 この結果、表面積が大きく残存モノマーの少ない、吸収性の良い吸収性複合体を製造す
ることが可能となります。
 さらに、単量体混合物の基材への含浸が防止されるため、基材内で樹脂を形成すること
がなく、基材の柔軟性を損なうこともありません。
 一方、引用文献1及び引用文献2に記載の発明では、本願請求項1の発明特定事項(c
)のような、不活性ガス流を流す方向や時期に関して特に言及したところはなく、また、
これらを一定条件に定めることで重合に好適な環境を形成するといった示唆もございませ
ん。
 かかる示唆なしでは、本願請求項1の発明特定事項(c)は、引用文献1及び引用文献
2に記載の発明から当業者と言えども容易に想到することができないものであると思料致
します。
 従って、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号、及び特許法第29
条第2項の規定には該当しないものと思料致します。
 同様に、本願請求項2に係る発明は、請求項1の従属項でありますので、特許法第29
条第1項第3号、及び特許法第29条第2項の規定には該当しないものと思料致します。
 
6.結論
 以上述べたように、貴官ご指摘の拒絶理由は解消されたものと思料致します。よって、
再度ご審査の上、本願発明に対して特許査定を賜りたくお願い申し上げます。
                                      以上

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    Author

    萬秀憲

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