金沢工業大学大学院 杉光一成教授の連載「経営戦略としての知財」の第3回「知財部不在のM&Aの問題点──「コーポレートガバナンス・コード」と「IPランドスケープ」の意外な関係」が9月7日に公開されました。
IPランドスケープで主に実現できることを、「1.新規事業の分析と提案」「2.M&A候補企業・アライアンス先候補企業の分析と提案」「3.経営分析」と3つに大別したうえで、今回は、「2.M&A候補企業・アライアンス先候補企業の分析と提案」と「3.経営分析」について解説されています。 以下は、私の理解で、多少ニュアンスが違うかもしれません。 「M&Aあるいはアライアンスを『IPランドスケープ』なしに進めることはできない」 「『経営分析』に知財情報を含めないで経営判断をしているとすれば、コーポレートガバナンス・コードの観点から大きな問題がある」 「経営分析においてIPランドスケープを活用することで、経営判断の客観的なエビデンスとなるので、コーポレートガバナンス・コードとの関係でも問題がなくなる。」 杉光 一成、経営戦略としての知財 第3回 知財部不在のM&Aの問題点──「コーポレートガバナンス・コード」と「IPランドスケープ」の意外な関係[公開日]2020年09月07日 https://bizzine.jp/article/detail/4958?p=5 知財全般ということで考えますと全く同感で異論はないのですが、特許ということで考えるとちょっと違和感があります。この違和感が何かよくわからなかったのですが、事業遂行に与える特許の影響度ということかなあと思っています。事業遂行に与える特許の影響が小さい分野で仕事をしていますと、事業の成功要因として特許が効いているか否かも議論されるべきではないかと思います。 株式会社イーパテント 代表取締役社長/知財情報コンサルタントの野崎 篤志さんが下記で書かれていること(図5 横軸に出願規模の多寡、縦軸に事業の成功要因として特許が効いているか否かを取っている。)が気になっています。 野崎篤志, IPランドスケープの底流―情報分析を組織に定着させるために, IPジャーナル9 号, P32-38(2019) http://e-patent.co.jp/2019/07/16/ipj09_ip-landscape_pdf/ この図をベースに考えると、医薬品、情報通信、半導体などは、事業遂行に与える特許の影響が非常に大きい。このような場合、特許を中心として分析した方が良いのはその通りで、もっとIPランドスケープが活用されるべきでしょう。 化学や自動車などは、事業遂行に与える特許の影響が比較的大きいので、同じ文脈で話ができるでしょう。 しかし、菓子などの食品、日用品、家電などは、事業のKSF:Key Success Factor=成功要因が特許以外にあり、事業遂行に与える特許の影響が小さい。こうした事業のKSF:Key Success Factor=成功要因が特許以外にあり、事業遂行に与える特許の影響が小さい分野でのIPランドスケープの遂行は、知財部にとって、かなり手強いと感じざるをえません。
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著者萬秀憲 アーカイブ
March 2025
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