IPジャーナル第14号(発行日:2020年9月15日)に、貝印株式会社 上席執行役員 経営戦略本部 知的財産部長 兼 法務部長 地曵慶一さんが「貝印が目指す"庶民派IP ランドスケープ"と"社内知財コンサルティング"」と題して、貝印の知財活動を紹介しています。(ちなみに、地曵さんの前職はユニ・チャームの知財法務部門の責任者)
「庶民派IP ランドスケープ」とは上手く表した言葉だと感心しました。多くの企業にとって興味深い実践であり、提言だと感じます。ぜひご一読を。 昨今のIPLについて感じることは、財務指標など他の情報ソースとのつながりをより意識するなど、本当に“主従逆転"の、エコノミストさながらの技法・手法としての研究が進み、高価なツールを使った、高尚で難解なものも見受けられる。 結局のところ、「たまに役に立つ」とのことで終わってしまう。さらに、たまにでも役に立てば良いが、数力月かけて揃えたデータや提言を出しても、経営から「ご苦労、それで?」と言われて言菓に詰まった経験は、箪者自身にも覚えがあるところである。 IPL業務は、会社の" 大プロジェクドの際に「たまに役に立つ」存在というよりは、むしろ、知財部門の日々の情報発信における中心的な位置付けにあるべきだと考える。知財から社内への発信は、常に知財情報をよりどころとすることで、「他部署にはない差別化されだ情報発信」を可能にし、それを事あるごとに絶え間なく、経営・事業・開発等に進言・助言し続けることで社内に広く貢献する、そうした「地道な活動」「身近な存在」であるべきではないかと考える。 以下、目次にしました。 1.貝印の考えるIPL (1)本当に進化しているのか、IPL は? (2)“水先案内人”として、地に足着けた“庶民派のIPL"を目指す (3)経営陣に「刺さる」シナリオライティングの力 (4)知財情報を発信する「勇気」と「割り切り」 2.「社内知財コンサルティング」との発想 (1)弊社の知財マネジメントの原点~「知財の2つの本質的機能」の理解 (2)「知財の2 つの本質的機能」を反映した職務分掌~貝印流の知財コンサルティング (3)社内知財コンサルティング=拡張された“水先案内人’' 機能との位置付け 3.新たな知財活用の姿~「商品価値化策」とは (l)知財の価値を顧客に伝える (2)営業・マーケティングと直結した「販売促進ツール」としての知財活用 (3)知財主導による顧客価値のデザイン 4.コンサルティング活動のポイントは、構想「前」の段階へ入り込むこと 5.目指すべき「企業知財人材のあるべき姿」 6.おわりに ちなみに、貝印株式会社は、平成31年度「知財功労賞」において「特許庁長官表彰」を受賞しており、受賞のポイントは下記の通りです。 貝印HP; https://www.kai-group.com/news/id/695 ■シンプルなデザインの中の特徴的部分やアイコン的デザインを保護するため、デザイナーの創作の意図を汲みつつ効果的に保護することが可能な部分意匠制度を積極的に活用している。多数の意匠で保護している使い捨てカミソリでは、国内シェア約4割を占め、シェアトップである。また、世界初の3枚刃カミソリを開発したメーカーとして海外からも広く認知されており、「関孫六」・「旬」ブランドなどの包丁は、国内外から高く評価されている。 ■中期経営方針の中で「顧客志向の高付加価値な商品・サービスを実現するための知財強化」が全社方針の一つとして掲載されており、当該方針の策定には、知的財産情報分析も活用している。また、副社長が本部長を務める経営戦略本部内に知的財産部を設置し、副社長と執行役員知的財産部長とで毎週の知財に関する報・連・相を実施している。 ■税関における取り締まり効果を見越して、見た目で侵害を明らかにできる意匠の出願に力を入れ、権利を長期間維持して、模倣品による被害防止に取り組んでいる。さらに、各国の有名シェフとコラボした高級包丁や調理ツールを欧米にて展開しており、コラボレーションビジネスを守るため、当該国にて意匠・特許等で知財網を構築している。
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著者萬秀憲 アーカイブ
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