2020年6月に特許庁より、経営戦略を成功に導く知財戦略【実践事例集】が発行されましたが、その中心的役割を果たされた金沢工業大学(K.I.T.)虎ノ門大学院イノペーションマネジメント研究科の加藤教授が、IPジャーナル第14号(発行日:2020年9月15日)に、令和元年度特許庁「経営に資する知財マネジメントの実態に関する調査研究」の総括を述べられています。
企業の知的財産部門に所属する者へのアンケートで、特に典味深いデータとして、知財活動の煎要度とそれらの実施状況を回答したものがある。具体的には、あらかじめ質問票に示された15 の知財活動こついて、回答者の所属機関として重要と考えるものを5 つまで選択させ、それぞれの知財活動についてどの程度実施できているかを5 段階(1.できていない~5. 十分できている)で回答させるものである。 知財部における伝統的な知財活動(特許・商標・意匠の出願·権利化業務係争リスクの極小化等)の実施度は概ね平均以上であった。 一方、最近特に重視されてきている戦略系の知財活動((IPランドスケープ等を含む知財情報の活用、企画機能の充実、オープン&クローズの推進等)は平均以下で、どちらかというとできていないと認識されていることが読み取れる。 横軸に知財活動の重要度と縦軸に実施度をプロットした図が示され、なるほどと思いました。 下記の項目について、事例を紹介しています。 知財情報の活用(IPランドスケープ等を含む):旭化成、 戦略企画機能の充実:デンソー オープン&クローズの雅進:ダイキン工業 標準化戦略と知財戦略の連携:ダイキン工業 知財ポートフォリオの構築および管理:シーメンス、セイコーエプソン、マイクロソフト グループ企業を合わせた知財マネジメント:キヤノン、本田技研工業 このような公開事例の性質として、現在進行中のものは当事者がその内容を公にできず、ある程度時間のたったものとなるのは致し方ない。また、知識ベースとして、このような戦略手段がある、あるいは戦術のための実務を知ることはまず絶対に必要である。しかし、知識ベースだけでなく、たとえ知っている事例、以前の事例であっても、その背景や、理由等を検討することにより、より深い気づきにつながるので、単に知識ベースとして捉えるのではなく、是非「頭を働かせつつ」事例を読んで、あるいは討議して実務に活かすようにしてほしい。 まさにその通りでしょう。
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著者萬秀憲 アーカイブ
March 2025
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