知財実務オンライン第13回「その「引用」は許される?著作物を「引用」する際の注意点」に登壇した澤田将史弁護士が三村小松山縣法律事務所に所属しているということで、三村量一弁護士が被告を代理した「ヒトにおけるアレルギー性眼疾患を処置するための点眼剤」事件を思い出しました。
三村量一弁護士は、「青色発光ダイオード(LED)」の特許権を譲り受けた会社が、発明者に支払うべき正当な対価をめぐって争われた訴訟の判決で、裁判長を務め、「発明の対価を604億円と算定したうえで、200億円を同社に支払いを命じた」裁判官です。 今般、三村量一弁護士が被告を代理した「ヒトにおけるアレルギー性眼疾患を処置するための点眼剤」事件について、最高裁令和元年8月27日判決(平成30年(行ヒ)69号審決取消請求事件)において破棄差戻判決がされていたところ、知財高裁(第2部)での差戻審(令和2年(行ケ)10118号事件)において、令和2年6月17日、原告の請求を棄却するとの判決がされました。(三村弁護士側の勝訴ということです。) この判決の意義は、下記のふたつの論説を読むとよくわかります。 小林隆嗣, :「局所的眼科用処方物」事件, ユニアス国際特許事務所HP判例研究(2020.8.25) http://www.unius-pa.com/wp/wp-content/uploads/R01_gyouke_10118.pdf 高石秀樹、令和元年 8 月 27 日最高裁判決平成 30 年(行ヒ)第 69 号「アレルギー性眼疾患を処置するための点眼剤」事件-(進歩性判断における「予測できない顕著な効果」の比較対象及び位置付け)、パテント、Vol. 73、No. 1 、43-48 (2020) https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/3480 審決取消請求事件 知的財産高等裁判所:令和元年(行ケ)第10118号 判決日:令和2年6月17日 判決:請求棄却 キーワード:進歩性,顕著な効果の有無,判決の拘束力 判決全文:https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/514/089514_hanrei.pdf 判決要旨:https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/514/089514_point.pdf ○ 発明の名称を「アレルギー性眼疾患を処置するためのドキセピン誘導体を含有する 局所的眼科用処方物」とする発明についての審決取消訴訟の差戻審において,当該発明 には当該発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができた範囲の効果を超 える顕著な効果が認められるとして,進歩性が認められた事例 また、三村量一弁護士の「事務所設立物語」も一読の価値があります。弁護士事務所設立、大規模法律事務所と小規模法律事務所の違い、新事務所の特色、弁護士事務所を設立してよかったこと、コロナ禍の下での法律事務所などからなっています。 弁護士事務所設立物語(三村量一), 早稲田大学知的財産法制研究所[RCLIP].HP , 2020年9月2日 https://rclip.jp/2020/09/02/202009column/
0 Comments
9月3日に行われた(第13回)知財実務オンライン:「その「引用」は許される?著作物を「引用」する際の注意点」(ゲスト:三村小松山縣法律事務所 弁護士 澤田 将史)を視聴しました。
下記でアーカイブ動画を無料視聴できます。 https://www.youtube.com/watch?v=_y1D15pGaLA 三村小松山縣法律事務所(Mimura Komatsu Yamagata & Tamai Law Firm、略称「MiKoTaMa」)は、知財に関する数々の著名判決を残した三村量一弁護士らが設立し、顧問として東京大学先端科学技術研究センターの玉井克哉教授、海外顧問として米国連邦巡回控訴裁判所長官だったランドール・レーダー氏が参画している法律事務所です。 澤田将史弁護士は、2016年~2019年に文化庁著作権課に出向して著作権調査官を務めていたとのこと。 原理原則がわかりわかりやすく説明されていまうが、キャラ弁の話など実例では微妙な判断が求められることが多く、著作権のむずかしさを再認識しました。 知財実務オンライン:「発明の課題に関する諸問題を裁判例から深堀りする~裁判例等研究の重要性と活用~」(ゲスト:中村合同特許法律事務所 弁護士・弁理士 高石 秀樹)を視聴しました。下記のようなトピックで、密度の濃い内容でした。
1.裁判例(等)研究の重要性と活用 2.進歩性~「本件発明の課題」 3.新規事項追加と「本件発明の課題」 下記にアクセスすると、アーカイブ動画を無料で視聴できます。 https://www.youtube.com/watch?v=MpKqxeU-gUQ 資料も、下記で入手できます。 https://45978612-36b0-4db6-8b39-869f08e528db.filesusr.com/ugd/324a18_357c102aa5384acc8ff6deb849d23b6f.pdf 「知財実務オンライン」は、2020年6月から、様々な知財のテーマについてゲストを招きながらオンラインセミナーのライブ配信&アーカイブ動画の公開を行っています。マクスウェル国際特許事務所 パートナー弁理士 加島 広基さんと、特許業務法人IPX 代表弁理士CEO 押谷 昌宗さんが運営されています。 8月20日に、第11回として「発明の課題に関する諸問題を裁判例から深堀りする~裁判例等研究の重要性と活用~」というテーマで、中村合同特許法律事務所 高石 秀樹 弁護士・弁理士が登壇されました。 以下は、私のメモです。 1.裁判例(等)研究の重要性と活用 数十年前~裁判例の蓄積が少なく、論理的思考が重要であり、未解決論点も多かったが、近時は、下級審裁判例が蓄積されており、一定の「影響」を及ぼしている。米国は判例法~法律論は先例拘束性あり事案が異なるかが勝負だが、日本も同じようになってきている。裁判例(等)研究が重要だ。 2.進歩性~「本件発明の課題」、サポート要件と「本件発明の課題」 クレーム文言が同一で発明の課題が異なる場合、本願発明の課題により、進歩性判断が異なる。また、サポート要件における「課題」の認定も、結論に影響大。したがって、当初明細書に記載する本願発明の「課題」は、進歩性、サポート要件等の諸論点も考慮して、“公知の課題”を書くだけではなく、工夫をする。 3.新規事項追加と「本件発明の課題」 補正・分割してクレームを拡張する場合,発明の詳細な説明、図面における構成の開示が全く同じであっても、発明の課題が異なれば、新規事項追加か否かが異なる。補正・分割する事項が、発明の課題との関係で本質的(必要不可欠な要素)でない場合には、明細書に明示的な記載がなくても補正・分割が認められ易い。 (第12回)知財実務オンライン:「IPランドスケープって何ですか?AIツールでどこまで特許調査・分析できるんですか?」(ゲスト:株式会社イーパテント 代表取締役社長 野崎 篤志)を視聴しました。
「IPランドスケープ」ブームに関しては、やや辛口、「AI」に関しては、ちょっと期待しすぎ、の感じがしました。 下記にアクセスすると、アーカイブ動画を無料で視聴できます。 https://www.youtube.com/watch?v=MpKqxeU-gUQ 「知財実務オンライン」は、2020年6月から、様々な知財のテーマについてゲストを招きながらオンラインセミナーのライブ配信&アーカイブ動画の公開を行っています。マクスウェル国際特許事務所 パートナー弁理士 加島 広基さんと、特許業務法人IPX 代表弁理士CEO 押谷 昌宗さんが運営されています。 8月27日に、第12回として「IPランドスケープって何ですか?AIツールでどこまで特許調査・分析できるんですか?」というテーマで、株式会社イーパテント 代表取締役社長 野崎 篤志さんが登壇されました。 Part1が「IPランドスケープって何ですか?」、Part2が「AIツールでどこまで特許調査・分析できるんですか?」でした。 以下、私のメモ書きです。 Part1「IPランドスケープって何ですか?」 日本語でいう「IPランドスケープ」は、特許情報とマーケット情報などの特許以外の情報を総合的に分析して事業戦略・マーケティング戦略・R&D戦略へ活かす取り組み(個別具体的な手法ではない)。 知財(特に特許)情報活用の歴史は、大きく分けると3段階 1970年代:特許情報活用の黎明期 2000~2010年代:経営戦略の三位一体 経営・事業に資する知財(1.データベースの整備 2.分析ツールの発達) 2017年~IPランドスケープ(1.知財の戦略的価値 2.第3次AIブーム) IPL(知財)情報分析を組織へ定着させるためには、組織レベルと個人レベルの取組みが必要。即効性のある方法はない。 組織レベルでは、 ●分析・データ分析の重要性を理解してもらう(残念ながら 痛い思いをしないと理解できない・・・) ●仲間・シンパをつくる(旭化成・中村部長) 個人レベルでは、 ●MBA(単科講座含む)で知財以外の人に交じって、事業 戦略・マーケティングなどについて学ぶ ●分析の考え方について学ぶ(≠表層的な手法) まとめ ●IPランドスケープは昔から続いている課題を表現した日本語 ●分析ツール・手法も必要だが、重要なのはデータ・分析重視の組織文化 Part2「AIツールでどこまで特許調査・分析できるんですか?」 AIツールは、アルゴリズム x 教師データ、アルゴリズム x 入力文章なので、 教師データ、入力文章次第。 ●AIツールで人間の調査・分析作業がなくなるわけではない ●AIツールの特性を考慮して、調査・分析業務に用いる ●人間が注力すべき作業は上流工程と下流工程 『IT Japan 2020』Web(オンライン)視聴セミナー<8月26日(水) 27日(木) 28日(金)開催>で、旭化成代表取締役社長小堀 秀毅 氏の講演「旭化成 DX推進への取組み 事業の高度化/価値創造に向けて」を視聴しました。 「旭化成は、研究開発の効率化や生産技術の革新だけではなく、事業戦略検討・事業創出、働き方改革に至るまでさまざまな目的でDXを推進しています。事業・製品・人財の軸で旭化成がどのようにDXを推進しようとしているのか、DX推進のための基盤をどのように強化しようとしているのかについて具体例を交えて紹介いたします。」ということでしたので、旭化成のDXの中での知財の位置づけがどの程度のものなのか、関心がありました。 中期計画の中でしっかり位置づけられているだけあって、成果を挙げている実例のトップに挙げられていました。 旭化成の中期計画の中で、IPランドスケープは、DX主要テーマの中のひとつに位置付けられています。 DX実勢の具体例の一番目に知財情報の活用(IPランドスケープ)がでてきました。 IPランドスケープとは、知財情報を活用して、経営に資する情報を提供する活動のこと。知財情報(ビッグデータ)解析により、競合の事業・技術戦略を浮かび上がらせる。 IPランドスケープの目的は、事業を優位に導く、新事業創出、事業判断(M&A等)。 旭化成特定膜事業に関連する技術俯瞰(特許マップ)の例が示されました。サプライチェーンの上流から下流に沿って、膜・装置・システムの領域を配置したマップが示され、旭化成は膜に特化しているが、競合は装置・システムにも出願しており事業領域が広いことがわかります。この技術俯瞰から、旭化成が今後、これまで通り膜に特化した事業に専念するのか、装置・システムまで事業領域を広げるのか、議論を進めている、という紹介でした。 DX実践例のトップとして紹介されました。 ちなみに、DX実践例の二番手は全生産をスマート化させる、三番手は工場の沿革管理、四番手は開発速度の劇的向上へ、五番手が基盤強化、六番手が専門性を高める、でした。 |
著者萬秀憲 アーカイブ
March 2024
カテゴリー |